良い感じ??

第4話

菅野くんの家はすごく綺麗に片付いていた。



「きれーい!」


「兄ちゃん、片付けろってうるせーからさ」



菅野くんは家に上がるとお茶を私の前に置く。



「椎夏、わりーんだけど、教育として進には手洗うように言ってるから、椎夏も一緒に洗ってくれるか?」



少し申し訳なさそうに流しを指差す菅野くん。



「うん!進くん、お手々あらおっ!」


「やっぱ、しーかはエラいなぁ。

やすちかなんて、いっつも洗わないで俺の菓子食うのに」



五歳児に改めて褒められると一周回って嬉しい。



「兄ちゃん、ご飯なにー?」


「スパゲティー」



すると進くんは椅子から飛び降りて喜ぶ。



「いえーい!ケチャップのやつ?!」


「あー、そうそう」



すると菅野くんは私を冷蔵庫の前に呼ぶ。


呼ばれた方に行くと、菅野くんはまた少し申し訳なさそうにする。



「あのさ、椎夏。

本当に悪いんだけど、俺が料理してる間、進見ててくれるか?」


進くんは車のおもちゃをガラガラと箱から出す。


「良いけど、手伝うこととかない?」



菅野くんは野菜を取りだし流しに持っていく。



「とりあえず大丈夫」



そして私をチラッと見て包丁を野菜に入れる。



「まぁ、俺としては椎夏と二人で料理する方が楽しかったけどな」



何も言えず赤くなる私に、なんてなー、って明るく言っちゃう菅野くん。



……きゅーん。



「しーかぁー!遊ぼーよー!」


「あ、うんっ!じ、じゃあ、菅野くんっ!

スパゲティー楽しみにしてる!」



やや早口でそう言って進くんの出した車を持つ。


何をするべきなのかよく分からなかったけど、とりあえず遊んでいると部屋の写真が目に留まる。


「あれが進くんのママ?」


指を差して聞くとうん、と頷く。


「その人、綺麗だろ」


「うん、綺麗」



「でも、おれのママは兄ちゃんなんだ」



車を手で押しながら、何もないみたく言う。



「……そうなの?」


「うん。

だって、兄ちゃんのがご飯も片付けもじょうずだし、おれと一緒にいるし」



本当はもう少し話聞きたいとかも思ったけど相手は五歳だし、どう聞けば良いのかも分からなかったから、とりあえず頷いてみた。



「俺、ママとあんまり話したことねーし」



進くんがそう言った時、菅野くんがスパゲティーをテーブルに出してくれる。



「じゃあ、早いけどご飯にするか」


「いえーいっ!」



私が菅野くんを見てると、私を見て不思議そうにして、また優しく笑って「いただきます」と手を合わせた。


ご飯を食べ終えてしばらくすると進くんは眠り出す。

良い時間だったので私は鞄を持ち立ち上がった。



「送る」


「えっ、良いよ!進くん、寝てるし!

起きちゃったらかわいそうだし!」


私の言葉に少し悩んで進くんをおんぶする。



「まだ早いから起きたら起きたで良いし、俺が送りたいから」



言い返そうとする私の口に、しー、と指を立てる。



「うるさくすると起きるぞ」



黙った私を満足そうに見て、菅野くんは家から出る。

急な階段をゆっくり降り暗い道を並んで歩く。



ほら、先輩!

やっぱり菅野くんはそんなこと、考えてないんですよ!



「……椎夏?どうかしたか?」


「えっ?!な、なんでもないよっ!」



大きい声で言ってしまい慌てて口を閉じる。


進くんは気持ち良さそうに菅野くんの背中で眠る。



「進くん、菅野くんに目元そっくりだよね」


何気なくそう呟くと、菅野くんは軽く頷く。



「でも俺達、父親違うけどな」



サラッとそう言われて、へぇとしか言えなかった。

すると菅野くんはしばらくしてから吹き出す。



「リアクション、うすっ!」


「えっ?!だ、だって、」


「俺の母親は恋多き女ってやつでさ。

進の父親ともすぐ離婚して、今はまた違う男に入れ込んでるみたいだな」



何も言わない私を菅野くんは楽しそうに見下ろす。



「すごくね?昼ドラみてーな女だよな」



その様子に戸惑って私は首を傾げてしまった。



「あ、笑えねーか」



菅野くんは笑いながら進くんをしょい直す。

そして菅野くんははぁ、とため息をつく。



「……なぁ、椎夏。ちょっと、止まれる?」



そう言うと菅野くんは私と向き合うように立つ。



「菅野くん?」



屈まれて近寄ってくる菅野くんを反射的に避けてしまった。



「……嫌だった?」


「あ、えと、ちがくてっ!」



慌てて首を振る私を少し不安そうに見る。



「……そ、そうゆうこと、したこと、なくて……!あの、えっと……、」



咳ばらいをした私を菅野くんはジッと見る。



「だから、ビックリしたけど、嫌とか、その、そーゆうわけでは……、」



そう言って焦る私の頬に、軽く唇で触れる。



「?!」


「椎夏、小さいからチューするのも大変だな」



手で頬を抑えると明るく笑う菅野くん。



「ま、続きは進がいない時に」



彼が一体、何を考えてるのか、正直まだまだ私には分かりません。







2011.06.15

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ママな不良彼氏 斗花 @touka_lalala

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