ママな不良彼氏
斗花
これって
第1話
お昼休み、菅野くんと一緒に二人で歩いていると私達を避ける様に開く廊下に、だいぶ慣れてきた七月。
「椎夏、放課後ヒマか?」
地味なお弁当を食べながら菅野くんが小さな声で覗き込むみたく聞いてきた。
「放課後?」
私の質問に少し真剣な顔で頷く。
その真剣な表情になんとなく、デートの誘いかも、とか微かに期待してしまった。
「ヒマ!」
ドキドキしながら頷くと菅野くんは明るく笑う。
「マジで?
じゃあ、もし良かったら俺ん家こない?」
……おれんち?
「菅野くんのお家?」
「そう。あ、家って言っても多分椎夏の家の半分にも満たないボロいアパートだけど」
なぜか変に自虐してから菅野くんは話を続ける。
菅野くんいわく、弟の進くんが私に会いたがってくれてるらしい。
「あいつ、椎夏のこと気に入ったみたいでさ。なんか会いたいって騒いでて」
一応言っておくと、菅野くんは年の離れた弟の進くんの面倒をすごくちゃんと見ています。
(不良少年の放課後参照)
「でも良いのかな?迷惑じゃない?」
「全然。つーか、」
少し下を向いて恥ずかしそうにする菅野くん。
「……進より俺のが、椎夏に来てほしい」
……きゅーん。
「菅野くんのお家ってどこにあるの?」
「え!来てくれんの?!」
頷いた私を嬉しそうに見てくれる。
「マジで!」
「うんっ!
じゃあ、今日、進くんのお迎え一緒に行ってそのままお邪魔しても良い?」
その後、菅野くんと放課後の約束をしてバイバイ、と手を振った。
ルンルン気分で5時間目を受け、6時間目の準備をしていると、部活の先輩の眞冬先輩が私のことを廊下に呼ぶ。
「椎夏、今ちょっと良い?」
「はい。何かあったんですか?」
「シーラバの夏コン、当たった」
眞冬先輩と私はSix Lovers、略してシーラバとゆう、6人組のアイドルのファンなのです。
「マ、マジですかっ?!」
「うん、マジ。昨日当落発表だったんだよ。
とりあえず、東京は当選。空けといてね」
携帯の手帳システムを開き私がそれを打ち込むと先輩は思い出したように、あ、と声を出す。
「そういえば、椎夏。
菅野保となんかうまくいってるっぽいね。
さっき、廊下歩いてるの見たよ」
「そうなんですよ!
今日の放課後も、遊びに行くんです!
菅野くんの家に!」
少し自慢っぽく言うと先輩はなぜか動きを止める。
そして先輩は私の腕を掴む。
「……椎夏。
あんた、菅野保とそこまでいってんの?」
……そこまで?
「どこまでですか?」
「いや、だから……。……その、そこまで」
「ん?なんの話ですか?」
先輩の言いたいことが分からず私は少し笑って聞き返した。
先輩は私を見て声を落とす。
「キス以上の行為をあいつとしたのかって話!」
私が瞬きをすると先輩はなぜかため息。
「そーだよね。
あんたみたいに見るからに純粋みたいな、そんなの知りませーんみたいな顔してる子が、そんなトントン行かないよね」
先輩の言いたいことがわかり私は動揺を隠しきれない。
そんな私を見て、先輩は尚更呆れた顔をする。
「でもですね、先輩!
菅野くんは私にそんなこと全く求めてないと思います!」
私の言葉にダルそうに頷く。
「だって、そうゆうことしようってなったこともないし、顔近づけられたこともないし、ベンチに座ったことも相合い傘したことも……」
「漫画の読みすぎ」
冷たくツッコミを入れた後私の肩に手を置く。
「そんなロマンチックにキスしたり、愛を語り合うほど、恋愛ってのは楽しくない」
その瞳の奥は私のことを哀れんでるようにすら見える。
「菅野保も例に漏れず、毎日椎夏を抱きたいと思ってあんたの隣を歩いてるんだよ」
「菅野くんはそんな人じゃありませんよ!」
「いや、そんな人だよ」
再び声を落として私に囁く。
「じゃないと、家なんて誘わないって」
じゃーね、と去っていく先輩を見てる余裕はなかった。
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