エピローグ:新たな謎への挑戦

山田真理子の研究成果は、日本の歴史観を大きく変えただけでなく、愛知県に新たな歴史観光のブームをもたらした。朝日古墳を中心とする「邪馬台国ロード」には、連日多くの観光客が訪れ、地域経済に活気をもたらしていた。


真理子は、国立歴史民俗博物館の特別研究員として、さらなる研究に没頭していた。彼女の次なる研究テーマは「空白の四世紀の謎」。邪馬台国の時代から大和朝廷の台頭までの空白期間を、DNAの観点から解明しようとしていた。


「この時代のDNAを分析することで、倭国から大和朝廷への移行過程が明らかになるかもしれない」と真理子は考えていた。


佐藤健太郎は、地元愛知で邪馬台国に関する講演会を精力的に行う傍ら、「空白の四世紀」に関する古文書の調査を開始。DNAと文献史料の両面からアプローチする新たな研究方法を模索していた。


鈴木明日香は、自身の過去と向き合いながら、真の研究者としての道を歩み始めていた。彼女は特に、研究倫理と社会的責任に関する講義を担当し、若い研究者たちに自らの経験を語り継いでいった。同時に、「空白の四世紀」の遺跡から出土した人骨のDNA分析を担当することになった。


高橋源三郎は、日本古代王朝守護会を解散し、代わりに「日本古代文化保存協会」を設立。「空白の四世紀」に関する民間伝承や秘伝の調査を始め、科学的アプローチと伝統的知識の融合を目指していた。


ある日、真理子のもとに一通の手紙が届いた。差出人は、韓国の考古学者だった。


「山田博士、あなたの研究に触発され、我々も古代韓半島と倭国の関係について再調査を始めました。特に『空白の四世紀』に関して、興味深い発見がありましたので、ぜひ共同研究をお願いしたいのです...」


真理子の目が輝いた。新たな冒険の幕開けを予感させる手紙だった。


彼女は研究室の窓から外を見やった。夕暮れ時の空に、赤く輝く夕日が沈もうとしている。その光景は、1600年前の「空白の四世紀」の夕暮れとどれほど違うのだろうか。


真理子は静かに微笑んだ。過去と現在、そして未来。それらを繋ぐ架け橋となる。それが、彼女たちに与えられた使命なのだ。


新たな旅立ちの時が来た。真理子は深呼吸をし、韓国の考古学者への返事を書き始めた。


「空白の四世紀の謎」を解き明かす旅は、まだ始まったばかり。そして、その旅は彼女たちを、誰も想像しなかった日本の古代史の真実へと導いていくのだろう。


(完)

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歴史方程式-卑弥呼の遺伝子暗号 AI(愛)狂技匠 @tatsumi4

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