第38話「すれ違う絆」

ミリアはある日、リーフレットの街の中央広場で偶然、暁の塔のメンバーと再会する。

久しぶりの再会に思わず声をかけようとしたが、ミリアはすぐに違和感を覚えた。カイル、エリナ、ロイドの雰囲気が以前と違う。何かが噛み合わない。まるで目の前に見えない壁ができたような――そんな感覚だった。

「おや? ミリア……」

カイルが冷たい視線を向ける。

「久しぶりだね……ギルドのあれ以来ね……」

エリナも表情を硬くし、ロイドは何か言いたげに目を伏せている。

「ミリア、ちょっと話がある」

カイルが店と店の間の隙間にミリアを連れて行った。

「ミリア、お前が……この前言ったフィーナのことだが……」

「うん」

「ある日、フィーナに偶然会って話を聞いたら……あれはお前がやったと言ったぞ」

「えっ?」

ミリアは一瞬、何を言われているのか理解できなかった。

「そんなはずは……フィーナがスパイとして操られていたことは確かよ!」

「でも、フィーナ本人はお前に命令されたって言ったぞ?」

「違う……そんなの嘘よ!」

ミリアの声が震える。カイルの言葉が信じられなかった。

(フィーナが……私を裏切るわけがない。じゃあ、また操られているの? それとも――)

ミリアの思考がまとまる前に、カイルが低い声で言い放った。

「ミリア……お前はもう暁の塔のメンバーから除名だ」

「え……?」

ミリアは自分の耳を疑った。

「お前はもう商売のことしか考えてないんだろ? 王宮に関わり、個人の店を持ち、ギルドにも顔を出さなくなった」

「違う……私はただ……」

「いいや、違わない」

カイルはミリアの胸ぐらをつかみ、強く睨みつける。

「フィーナが言ったことが嘘だと証明できるのか?」

ミリアは言葉に詰まった。

(証明? どうやって? 彼女がまだ影の女に操られている可能性がある。でも、それを証明する手立てが今はない……)

「もういいよ、ミリア。お前は暁の塔のメンバーじゃない」

カイルがミリアを突き放した。

「俺たちは俺たちの道を行くから」

エリナもロイドも沈黙を貫いたまま、カイルの後を追うように去っていく。

「待って……」

ミリアは手を伸ばしたが、言葉が続かなかった。

(これも、私のせい? あの時、ギルドで暁の塔のメンバーに会わなければ……私は別の道を選べたのかな……)

ふと、空を見上げると、雲が広がり、ポツリと冷たい滴が頬に落ちた。

そして、突然の大雨――。

ミリアはずぶ濡れになりながら、ミリア商店に戻ろうとした。だが、気づけば足が勝手にサクヤ商店の前へと向かっていた。

(……どうして、私はここに?)

扉を開けようとしたその瞬間、全身を襲う寒気と震え。

「っ……」

視界が滲む。身体が重い。

――そして、そのままサクヤ商店の前で崩れ落ちた。

遠くで誰かが叫ぶ声が聞こえる。

「おい、誰か来い! ミリアが倒れてるぞ!」

意識が遠のく中で、ミリアは微かにその声を聞いていた――。

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