第13話:最初に出会った時から、はなびにひかれていた



 僕は片方の怪腕を斬った。

 だからこそ、はなびの中の鬼の血は、強い危機感を抱いたのかもしれない。

 はなびは止まらなかった。

 むしろ、その動きがさらに激しくなった。

 狂暴。鬼の血に狂いかけている。


 秘剣残月。

 一度は通じた。

 圧倒的な身体能力のはなびにすきを作り出し、その左の怪腕を斬った。

 二度は通じない。


「ぐっ……!」


 右の怪腕は鬼気をまとって振るわれる。

 もうはなびの意識自体がないのかもしれない。

 腕にのっとられたようなものだ。

 そんな姿は絶対に見たくない!


 最初に出会った時から、はなびにひかれていた。

 その笑顔も、しぐさも、誰に対しても明るい姿に目が離せなかった。

 最初は、自分が鬼斬りだからだと思った。

 そうじゃない。

 一緒にバスケをして、あんなに胸がどきどきしたのは初めてだった。


 だからこそ。

 終わらせる。どんなことがあっても。


 秘剣が通じないなら。

 もうはなびに――いやはなびを乗っ取った鬼にすきがないなら。

 その一歩先に踏み込むしかない。


 刀を振る。

 二度、三度、四度。

 五度、六度、七度。

 ここまでは秘剣と同じ。

 でも、幻惑するのは。

 次の一手を分からなくさせるのは、はなびじゃない。

 僕自身だ。


 激しいはなびの怪腕の一撃が、頭をかすめた。

 衝撃で意識がかすむ。

 つい苦笑してしまう。

 最後の一歩は、はなびが踏み出させてくれた。




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