私と蛇と謎の場所?

中田もな

一匹目

 私の家の近く、そして私が通ってる小学校の近くに、蛇を祀った神社がある。

 毎年お正月になると、私はお父さんとお母さん、そしてお姉ちゃんと、その神社に初詣に行く。


「今年は巳年ね。すみれ、巳年だったわよね?」

「そう言えば、そうだったな。今年はすみれの年だ」


 お父さんとお母さんが、私を見てにっこりと笑う。そう言われてみれば、確かに私は巳年だ。

 ……まぁ、「だから何?」って感じなんだけど、私の年っていうのは悪い気はしない。

 でも、蛇ってのがヤダな。せっかくなら、卯年が良かった。だって、ウサギって、可愛いじゃん?

 そんなことを思いながら、私はお父さんとお母さんに続いて、賽銭箱の列に並ぶ。いつもはがらんとしているけれど、今日は大勢の人間が今か今かと列をなしていた。


「そう言えば、あなたは何年だったかしら?」

「さぁて、何年でしょう?」

「もぉ、意地悪しないでぇ」

「あははは、当ててみなさーい」


 お父さんとお母さんは朝からエンジン全開で、今日もイチャイチャラブラブだ。こういうの、鬱陶しいと思うんだけど、クラスの子に話したら、「仲良いだけ良いじゃん。ウチなんか冷戦だよ」と言われた。


「ね、ね、すみれ」


 後ろに並んでたお姉ちゃんが、私の背中をチョンとつつく。「何?」って言って振り向くと、やたらとニヤニヤした顔がそこにあった。

 今日もこんなに寒いのに、短いスカートなんか履いちゃって。だから、お母さんによく「風邪引くでしょ!」って怒られてる。その度に、「これはファッションなの!」とか何とか言ってるんだ。


「ちょっと、横、見てみなよ」


 言われた通りの方を見て、私は思わず「うげっ」となった。紅白柄の見せ物台に、ペットショップにあるような飼育ケースが乗っかっていて……。その中で、真っ白い蛇がチロチロ舌を出していた。

 何で、と私は思った。この飼育ケース、去年は目立たない所にあったのに。一昨年だって、トイレ近くのどんよりした場所にあった。だから私は、何とか蛇を視界に入れないようにしてた。なのに今年に限って、こんな人目のつく場所にあるなんて!


「すみれ、幼稚園の頃、あの蛇を見て大泣きしてたよね。とんだ罰当たりなんだから」

「うるさい! そんな昔のこと!」

「昔って、たかだか数年前でしょ? あー、今思い出しても面白い」


 本当に、お姉ちゃんはイジワルだ。あの時だって、お姉ちゃんが変に怖がらせてきたくせに。だから私は、蛇が嫌いになったんだ。


「ねぇねぇ、すみれ! この網の隙間から、蛇の身体、触ってみなよ!」

「うざい! マジでやめて!」


 もう、これだから姉妹ってヤダ。私は心の中でため息をついた。

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