君と異端に
聖書は放物線を描くことなく、リーシアの小顔に向かって一直線に激突した。
今までに聞いたことがないような鈍い音がこの街をこだまする。
「……え?」
リーシアは困惑と絶望が滲んだ表情で縋るようにこちらを見つけてきた。
それは盲信していた神が死んだような、魔女狩りの件を聞いた時の俺と同じ顔である。
おそらく俺の彼女に対する愛は絶対的で、自分にとって常に友好的であると思い込んでいたのだろう。
「あなた私が好きなのよね…?キラスト教がす、好きなのよね!何でこんなことするのよ…」
「お前に一つ謝らないといけないことがある」
「な、何よ…?」
「俺はあいつに殺されかけた後、レイシア様と交わった。それどころかさっきまで裸の彼女とこれからについて話していたんだ」
「は、はあああああああ!…な、何よそれ!裏切り者!」
リーシアは物凄い剣幕で、こちらへ迫ってくる。
怒りで身体をぶるぶると震わせながら、俺の身体を揺すってくる様は実に滑稽だ。
「あんたキラスト教徒としても男としても最低ね!1人の女への誓いと宗教の教義すら守れないクズが!」
「ああ、全くもってその通りだよ。だからお前が嘘と真実の諸々を教会に密告する前に、俺たちはこの街を出ていくつもりだ」
「……悔しくないの?あんたより遥かに優れている強者に女が奪われて、この街から事実上追放されるのよ?無様ねぇ」
「レイシア様と心機一転やれるんだし、むしろ楽しみだね」
俺が絶対的な存在として崇めていた神は大切な人の家族を殺し、壊してしまった。
そんな人殺しより俺は自分のことを愛してくれる彼女を選ぶ。
安寧の美辞麗句や天国への蓋然性が馬鹿馬鹿しく思えて仕方ないのだ。
「お前はあの時、ホレウィンに『庶民の私を愛してください!』って言ってたよな?つまるところ、ただ自分の何者でもない惨めさを満たしてくれるアクセサリーが欲しかっただけなんだろ?」
「そ、そんなこと…」
「だが、俺が別の女と添い遂げるであろうことを知って不安になった。……庶民の私が騎士階級のホレウィン様にいつまでも愛されるのかなって。いい事を教えてやろうか、お前みたいにただの農民で無力な奴は絶対に捨てられる」
「うるさいいいいいいいいいいいい!」
リーシアは歯軋りで不協和音を奏でながら、地団駄踏んだ。
物凄い憎悪と恨みが凝縮された眼光でこちらを視姦してくる。
「だから手軽で無償の愛をくれそうな俺が別の女に尻尾を振って怒り狂ってるんだよ。自分の器を自覚しちまったんだろ?」
「あんただって同じでしょ?むしろ、生まれが最悪で、クソみたいな親から暴力を受けて育って、惨めな格好で物乞いみたいにこの街に住み始めたドブネズミでしかない生まれながらの弱者よ。そのせいか身長も低いし、弱者の穢れた血が宿ってる格下のオスでも私は、相手してやったのよ?どうせあなたもレイシア様に捨てられるわ。というか思い出作りに協力してあげた私に感謝して欲しいくらいよ」
リーシアが饒舌に俺への侮辱という名の反論したその刹那、ドンっと破裂音のようなものが背後から聞こえてくる。
そこにはリーシアへの威嚇射撃で玄関の窓に銃を発砲したレイシア様が居たのだった。
あと、数話で完結する予定なので、★欲しいです
何卒★をお恵みください....
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