束縛
「君はさ、まだあのミーハー女に未練あるの…?」
レイシア様はまるでナマケモノのように強く俺に抱きついて呟いた。
隙間が一切ない程の密着度で、豊満な胸の感触がこれでもかと言うくらい伝わってくる。
「異端関係なしにしてもないですね。きっとリーシアは聖騎士様に恋をしていたんだと思います。男として負けたなぁという虚しさが残るだけです」
今思えば、リーシアと俺は自由恋愛だったとは言え、むこうの同情心で交際関係が成り立っている側面があった。
きっと元婚約者に異端の道を選ばせてしまうくらいには、俺に魅力がなかったのだ。
「ん、そっか。なら、あの女が作ったブレスレット…必要かな?」
レイシア様は怪訝そうな表情を浮かべ、今年の誕生日に貰ったブレスレットを指差す。
この村では成人である16歳の誕生日にブレスレットを送り合う風習があるのだ。
「元婚約者なんだよね?別れたんだよね?他人であるあの子のことなんて、もう覚えておく必要もないよね?」
「…怒ってるんですか?」
「ううん、全然怒ってないよ。どうして肌身離さず持ってるのかなぁって疑問に思っただけ」
「そ、そうですか」
レイシア様の剣幕に思わず怖気付いてしまう。
異端を犯したとはいえ、流石は聖職者である。
オーラが一般人とはまるで違った。
「もしかしてさ、嘘ついたの?私を求めたんだよね?私たち愛し合ったんだよね?」
「……」
「ねぇ…ねぇねぇねぇねぇ!何とか言ったらどう?言ってくれないと私分からないよ」
「お、落ち着いてください」
「落ち着いてるよ。もしかして昨日の夜は遊びだったのかな?」
「遊びじゃないです!…正直記憶は曖昧ですけど、本気です」
聖職者とそういう関係を持つ時点で異端なのに、それが遊びであろうものなら末代までの恥だ。
それに歪んではいるが、こうして自分のことを好いてくれる人がいるというのは悪くない。
「ふふっ、そうだよね!君は私のことだぁ〜い好きだもんね?なら、そのブレスレット捨てちゃおっか」
「流石に貰い物を捨てるのは罰当たりじゃないですかね…?」
「君は浮気するの?」
「え」
「…それ浮気だよ?」
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