第8話

「ここにコーヒー代。置いておくね」


どうやら常連のお客さんなのだろう。


「ありがとうございました」


「嬢ちゃんは、学校行かないのかい? この店で働いている店主のその男も、最初は学校なんて無意味だって、通わない時期があったんだよ。でも、今は通って良かったってさ」


店主はニカっと歯を見せて笑い。フルーツパフェを私の前に置いた。


「ある日。急に地に足がついたんだ。自分が今何をやっているのか? このままでいいんだ。今どんな気持ちだ? もう腹をくくった。自分がわかった気がして、学校に通うようになってな。どっしりと腰が座ると学校は楽しいことばかりだ」


私はハッとして、立ち上がった。

フルーツパフェの代金を支払い家に向かって走った。


夕方の6時に父の店が開く。

店の準備をしている母に、後ろから抱きついた。


「ワガママ言って、ごめんなさい! 私、明日から学校に行く!」


涙が溢れた。


母は困惑したが、ホッとして。


「頑張ったのね。やっと解ったのね」


「それと、父さんの居酒屋で働いて、そのお金で専門学校に行きたいの。どうしても、体の弱い人を支える資格が欲しいの!」


母は大笑いして、感心した。


「すっごく頑張ったのね! いっぱい考えたのね!」

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黄金色の風船 主道 学 @etoo

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