第6話

 男の子はよく見ると、中学生くらいだった。

ゆっくりと胃にお粥を流し込む仕草を見ていると、私はなんて可愛らしいんだろうと思った。


「私は山口 友紀よ。あなたは?」


「鳥多 悟」


男の子はお粥をスプーンで掬いながら、ソッポを向いてポツリと言った。


この子はどんな仕草も可愛いかった。


「え? 鳥多?」


「そう、あの空の風船を飛ばしている会社の社長がぼくの父さ。でも、大嫌いなんだ……。あそこ。ぼくが遊べる乗り物なんて、一つも無いし。いつも我慢しないといけないんだ……」


悟はお粥を全て胃に流し込むと、一つしかない窓の外を覗く。


私もつられて覗くと、色とりどりの風船が大空を波のように泳いでいた。


「ねえ、また会おうよ」


「うん」


男の子が元気良く頷いた。


その時、外へと通じる店のドアから、一人のスーツ姿の大男が入ってきた。


「坊っちゃま。ここにいたのですか。探しましたよ。心臓が弱いのに、一人で遠くに行ってはいけませんとあれ程言ったのに。さあ、散歩の時間は終わりですよ。帰りましょう」

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