第5話

その子が私に話しかけた。


「うちのベンチに落ちてきたから、それだけでもレアものね」


「ここ、キミんち?」


男の子は息切れする私に向かって微笑んだ。

私は気が付いた。自分の体は空虚な心を満たして、そして急かすファンタジックな気持ちが動かしたのだ。


「ねえ、お腹空いたんだ。見た感じお店のようだし何か食べさせて」


「いいわよ。営業時間はもっと遅くだけど、一食ぐらいサービスしてあげる」


私は頬が熱かった。

自分でも驚くほど快活な声音だった。


私は男の子の車椅子を押して、店に入った。

3つしかないテーブルの一つにつかせて調理場に向かった。

手頃な食材を選んでいると、男の子の声が聞こえた。


「ぼくは体も弱いし、胃も弱いんだ。胃に優しいものにして」


私は裏メニューのお粥を作る準備をした。


「まさか、キミ一人で経営してるわけじゃないよね?」


体が弱そうな印象だけれど、元気に話す口の持ち主だった。


「母が切り盛りしているわ」


私は米をよく研いで、圧力鍋に水を入れると、研いだ米を入れ、さつまいもを一切れ大にして入れた。

そして、煮える前に塩を一つまみ。


出来上がると男の子のテーブルに、暖かいウーロン茶と共に置いた。

「ありがとう」

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