“演義”を超えて、“志”の人・玄徳の真実に触れる
- ★★★ Excellent!!!
『新三国志』は、我々が長年親しんできた「三国演義」の劉備像を軽やかに飛び越え、史実を土台とした“真の玄徳像”を丁寧に描く作品です。
序幕で描かれるのは、少年期の玄徳。学問よりも武芸を好み、正直で、仲間思いで、時に熱くなりすぎる気質――それは「お人好し」では済まされない、生まれながらの義と胆力の人。
彼が公孫瓚に兄のように慕われ、仲間に信頼されるのは、単なる“いい人”だからではなく、強くて、まっすぐだからなのだと納得させられます。
そして第2話――青年となった玄徳が、疲れた日常に溜息をつきながらも、目の前で人さらいを目撃した瞬間、迷いなく踏み込む場面は圧巻。
正義感からではなく、“苛立ち”と“見過ごせなさ”が動機となるところに、逆にリアリティと凄みを感じます。まさに、強くて優しくて、不器用な玄徳の本質が滲み出る一幕です。
物語の運び方も巧みで、史実に基づきながら、現代の読者にも親しみやすく、キャラクター一人ひとりが生きている。
これは、演義をなぞるだけの物語ではありません。“三国志”だからこそ描ける、英雄たちの原点の物語。
その始まりに、確かな熱と誠実さを感じました。