二章 "君と見た最後の夜空"

第11話 夢喰らう"愚者"と記憶 其の一

朝陽に照らされて私は起きる。パジャマからいつもの黒いスーツに着替えリビングに向かう。朝食を軽く取り「異変レーダー」に反応がないか確認する。自室に戻り刀を手に取りリリアナの居る書庫に向かった。


「リリアナ、入るわよ。」書庫の扉をノックし、開く。書庫には大きな机と椅子が二つあった。机のある方に歩いていると後ろから気配がした。


「やあ、おはよう咲妃。昨日はよく寝れた?」


「リリアナ、私の胸触ろうとしてたでしょ。気配で分かるわよ。」


「げ、バレちゃったか。まあ取り敢えず座ろうよ。今日は何飲む?」と席に案内するリリアナに私も着いていき席に座る。


「今日はココアが良い。」


「分かった。」と指を鳴らし机の上に二つマグカップが現れる。そのマグカップを手に取る。


「さえ今日は咲妃に頼みごとがあるんだ。咲妃には倒して欲しい奴らがいるんだ。」


「奴らって?」


「最近人の"夢"や"良い記憶"を喰らい、他者の幸福を奪いそして自分の記憶にさせる「"虚無の演者"」がいるんだ。」と言いココアを飲むリリアナ。


「まあ、「"虚無の演者"」だったら倒すけど、夜のいつに現れるの?」私もココアを飲みながら質問をする。


「うーん、それが分からないんだよね。咲妃は"良い記憶"とか在る?」


「いや、少ないわよ。ただでさえこの家系だからね。毎日大変で良い記憶なんて無いわよ。」


「なるほど、なら僕と一緒にベッドインする?忘れられない一夜にするけど。」


「冗談はそれぐらいにしてどうするの?出現が分からないなら倒しようが無いんじゃない?」


「あ、咲妃さらっと今スルーしたね。まあいいや。奴は必ずここに来る、だから咲妃頼んだよ。」


「分かったわよ。取り敢えず私は家の訓練所に行くから、またなんかあったら教えてね。あとココア美味しかった。」刀を腰にかけ立ち上がる。


「お粗末様、技を一通り試してね。技が増えたから適応に時間掛かるかもだから。」とリリアナも立ち指を鳴らす。



私の家は武士の家みたいに広い。例えばお風呂が大きかったり、禁書庫があったり、今向かっている訓練所があったりと様々なものがある。訓練所の扉を開ける。武士みたいな家と例えたけどこの家の家具や設備は凄い、ボタンを押せば全自動で洗濯をしてくれるし、お風呂は常に新しい湯になるし、この訓練所だってボタンを押せば「"怨念"」を模したやつが出てきて設定で変えることが出来る。


黒影犬ノワールと闘ったとき私では歯が立たなかった。リリアナの助けがなければ確実に死んでいた。私の「"異能"」は犬型の「"怨念"」と相性が悪い。そのために練習だ。このシステムは要望に応じて「"怨念"」の型などを再現してくれるやつだ。そしてレベルを設定できる。五段階のレベルに分けられているが今回はやつのレベルが分からないため設定はしない。


「認証コード」システムが発動し、刀をいつもの定位置に置く。刀に集まったデータ達をシステムに入れやつのデータを入れる。


「認証完了。訓練中刀は磨ぎますか?」


「うん、お願い。」


「了、木刀を受け取ってください。」と木刀が現れる。私専用に創られた木刀を手に取り素振りをする。


「それでは、扉が開きます。ご安全に。」私は開いた扉に進む。中に入ると中は暗く、扉が閉まった。すると部屋が明るくなり犬型の「"怨念"」が現れるのだった。


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