⑦時空仙人の苦悩
カノジョはカノジョを知る全ての知的生命体から、時空仙人と呼ばれている。直接的か間接的かに関わらず、カノジョの存在を知覚したモノは、必ず「時空仙人」の呼び名をも知覚することとなる。いかなる知的生命であっても、必ず、である。しかし、ある存在とその呼び名を同時に知覚することの、その原理を理解できる知的生命は限られている。きわめて高度で多次元的な概念理解力を要するためである。
「アタシが存在しているせいで、***(意味:地雷(読み方:マイン))ちゃんを老けさせてしまっているのが、辛くて辛くて仕方がないんだよう」そう言って、時空仙人は泣いた(この場合の泣く、というのは、概念としての悲しみを表出することであり、頭でっかち星人のように光受容器官から体液を分泌する疑似的な行為とは本質的に異なる)。
「よくわかります。アナタの苦悩はよくわかりますよ」
「病んじゃったんだよ。マインちゃん、病んじゃった。し、し、皺が、出来て、かわいい、かわいい、お顔に皴ができて。でも、でも、それでもかわいいよオって、それでも、皴があってもかわいいよオって、思うんだけど、マインちゃんはそれでは納得しないみたい。自らの老いに納得しないみたい。それもこれも全部アタシのせいだ。アタシが存在しているせいで、アタシが年を取るとマインちゃんも年を取ってしまうから、だからいけないんだよう。もう、アタシ消滅しようかな。滅しようかな、アタシを」
「しかし、アナタが消滅しようとも、マインは年を取るのでは? あなたがマインを観測しないだけで、他者がマインを観測できてしまうということにおいて、マインは老いから逃れられないでしょう。そもそもマイン自身がマインを観測しているのですから、仮にマイン以外を消滅させたとしても、マインは老いることになるのでは」
「おワァ、たしかに」時空仙人は振動した。「それなら、アタシを信仰する魔法星たちに、若返りの魔法と、不老の魔法を作ってもらおう。それをマインちゃんにプレゼントすればいいんだよ。おワァ、いいアイデアだなァ」
「信仰者がアイドルに貢ぐモノほど卑しいものはない、という偏愛星人の諺がありますよ」
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