第28話 街道判別不可だが風向は明媚

「こんなに成ってたの?」

「街道じゃ無いね」


 この状態では、旅の商人もやって来ないだろう。

「綺麗な風景なのに、見る人が殆ど居ないなんて勿体無いね」

「アダン様に連れて来て頂いて、この風景見れただけでも来た甲斐が有ります!」


 辺りは灌木林に草原が広がり、北の山脈中央は岩が剥き出しで、湧き水が滔々とうとうと流れ落ちて居る、山水画の様な風景だ。

「あそこまで行って、水の補給しよう!」

「少し早いけど、水場で野営にしましょ」



「お! 結構大きな魚が居る!」

 トーラとセインは、ジャブジャブ川に入って、剣で魚を突き刺し僕の方に放って来る。

 僕は手早く三枚に卸して行った。


 香草を刻み粒ピリも粉にして小麦粉に入れ、塩を振った魚の切り身にまぶす。

 ※粒ピリは山椒さんしょの実と思ってください。


 野牛の脂肪で、切り身を焼き、初めての料理だから味見した。

「お! 予想外に美味しく仕上がった」


 ※料理に詳しく無い方に、淡白な川魚を牛脂で香草ムニエルにした料理で、程よい塩味に粉山椒のピリピリが利き、牛脂が程よい濃厚さを出している、旨そうでしょ。


 大量の香草焼きが出来上がり、多目の牛脂で大量の魚の骨を揚げ焼きにして、塩を振り掛けた。

 これも味見、ポリポリ食えて旨い!



「アダン! 一人で食ってズルい! 私にも食わせろ!!」

「横で見てましたが、アダン様の料理は無駄の無い芸術です!!」



「おぅ!! 旨い!」

「美味しいですね!」

「この骨焼きも凄く美味しいです!」


「旨イガ、モット量ガ欲シイ」

「プリンはそう言うだろうと思って、これを用意した! ネギ玉入り肉芋」

 ネギ玉入り肉芋の鍋を出してやった。

 プリンは、飲み物の様にガブガブ食って嬉しそうに、クネクネしてる。


「アダン、それも欲しい!」


 もう一鍋トーラの前に出してやった。

「はい、トーラが言うだろうと思ってた」


「ここに私達以外の人が居なくて良かった! アダン様のタラシ料理が、これ以上人や魔物を魅了しません様に!」

 セインのタラシ料理が出た。

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