第二話 麗人、乱世にて賊と会敵する事

『ヒャッハァー! こんにちは、乱世の象徴、賊でございます!』

『乱世といえば我々でございます! 略奪と暴虐こそ乱れた世の華でございます!』

『そこ行くは何と美しき御婦人! 昂る欲望が抑えきれません! 全力で奪わせて頂きます!!』


 さても暴威を揮うは傍若無人なる賊徒、乱世においては官吏かんりによる守護もおろそかなれば、旅人は成す術もなく奪われるばかり。


 さて、並みいる賊徒の襲来を受け――ようは静かに構え、直後。



「――――テヤァーーーッ!!!」


『ぐっグワアア! 骨が、骨が抜かれて……どうなっているのでございますか!?』

『すれ違いざまの一瞬で、西安でも随一の賊たる我らが、一瞬で全滅しようとは!』

『何と恐るべき絶技、何より輝くような美貌! 賊、震えるばかりでございます!』



 血どころか痛みすら感じさせぬ〝骨抜き〟の絶技により、恐怖と共にくずおれる賊徒達に、楊は抜き取った骨をそれぞれに投げつけつつ言った。


「己の性悪せいあくもとは世の乱れにあらず、其の心根に在り。

(意訳:悪事に走る理由を乱世のせいにしてんじゃないよ、そらもう自分のせいよ)


 これに懲りましたら賊などやめて、これからは誠実に働きますように! では私はこれにて、御免!」


『!! なんと清廉なる論調、賊、心が洗われた心地でございます……!』

『美貌のみならず、心根までも清いとは……眩いばかりでございます!』

『これからは心を入れ替え……より一層、気合を入れて略奪に励む所存でございます! これぞ我らの仕事、名付けて〝賊働ぞくばたらき〟にございますれば!』


「ただいま戻りました、もう一本くらい抜かせて頂きます! テヤァァァァ!!」


『『『グッグワァァァァァァッ! でございます!』』』


 会敵せし賊徒を難なく打ち払い、楊の旅は続く。

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