第4話 デート?

 そうして俺らはその場所にたどり着いた。


「ここは……遊園地か?」


「そうです! 遊園地ですよ!」


 ドヤ顔をしながらそんなことを言うコイツ。


「よりによってかよ……」


「何でそんな顔するんですか!?」


「いや入園料かかるし、食べ物とかも高いし、待つのも怠いし……」


「あーもう、口を開けば文句ばっかり……お金は私が出しますよ」


「マジで!?」


「ええ。それくらいはいいですよ」


「やったー! 神! 最高! タダ!」


「本当に変わらないですね……」


 そんなこんなで二人で遊園地を回ることになった。




「まずはアレから乗りましょう!」


「……ジェットコースターか」


 俺は絶叫系のアトラクションに一度乗ってみたいと思っていた。そのため、特に反対もせず列に並ぶのだった。


 周りにはカップルがちらほら見られた。



「ねぇ、私ジェットコースター怖い!」


「大丈夫、俺がついてるから」


「たっくん……」



「……」


「……なぁ、スマホばっか見てないで、もう少し話しようぜ?」


「……なに、私に命令すんの?」


「……ごめん」



「……なぁ、何で男二人で遊園地にいるんだ?」


「……」


「……?」


「……彼女にフラれたんだよ」


「……すまんかった……」



 ……どうやらカップルだけではなかった。


 にしても、カップル達はよくバレンタインにこんなところに来れるものだ。こんなに混んでいるのに……まあ恋人との思い出作り、という感じなのだろう。


 そんなことを思いながら、俺は目の前のソイツに目を向ける。


「……何ですか、そんな顔して。全然楽しそうじゃないですよ」


 それはそう……と、俺は危うく口に出しかけた。いやー俺ってば、やっぱり偉いね。


「そんなことないぞ?」


「……だったらもっと楽しそうな顔してください」


「俺があまり表情豊かじゃないことぐらいわかってるだろ?」


「まあ……それもそうですね」


 そんなこんなで話をしていたら、俺らの番が回ってきた。


 係員の指示に従ってシートベルトをし、安全バーが下げられる。


「……歩夢君はこういうアトラクション得意ですか?」


「わからん。ただ、昔から乗ってみたいと思ってたんだ」


「そうですか……なら、良かったです」


 そうして、コースターは発車した。乗ってた時のことはあまり覚えていないが、楽しかったような気がする。


 あとは……隣から絶叫が聞こえてきたような気はした。




 俺らはその後、メリーゴーランドやらコーヒーカップなど、様々なアトラクションに乗ったわけなのだが……


「お前……大丈夫か?」


「……いえ……お気に……なさらず……ウッ」


「……一回休むか?」


「……はい」


 流石にソイツのことが心配になったので、俺らは近くのベンチで休む事にした。


「酔うくらいなら乗らなきゃよかったのに……」


 その一言に対して、ソイツは思ってもいない返答をした。




「いえ……折角のデートなので……少し張り切ってしまって……」




 俺は驚きながらも言った。


「え……これってデートだったの?」


「え? 逆に何だと思ってたんですか?」


「いや俺はただお前のわがままに振り回されただけかと……」


「違いますよ!」


(半分は合ってるだろ……)


 にしてもデート……か。俺は全く意識してなかった訳だが……まあ、別に意識するものもないか。


「取り敢えず、お手洗いに行ってきますので、待っていてください」


「へいへい」


 そうして俺はしばらくそのベンチで休憩するのだった。




○○○




 私がトイレから出た、その時だった。




「そこのおねーちゃん。今一人かい?」




 私は知らない男から声をかけられていた。


「いえ……彼が待っているので、失礼します」


 そうして私はその場から離れようとしたわけなのだが……



(ガシッ)



「まあまあ、少し話をしようぜ」


 そう言って、男は私の手首を掴んでくる。


「!? ちょっと、離してください!」


 そうして私は抵抗しようとするのだが……




「……ギャーギャー喚くなよ」




「んぐっ」


 ソイツは私の口元を押さえられ、首元にはナイフがあてられる。


「騒ぐと周りに聞こえるだろうが。静かにしろ」


 気づけば目から涙が出てきていた。しかし、声を出して助けを求めることもできない。


「ここは少し人目につく。向こうまで行くぞ」


 そうして私は連れていかれそうになる。今まで感じたことのない恐怖感に私の心も体も支配される。


(……助けて……)


 誰にも聞こえるはずのない心の叫びは、そのまま虚空えと消えていき……




「待てよ、おっさん」


 そこに一つの声が響き渡る。


「だっ、誰だ?!」


 私は声がした方に視線を向ける。


 そうして彼は言った。




「……ソイツの彼氏だ」




○○○○○○○○○○○○○○○




 どうも、レンジでチンです。


 最後まで読んで頂きありがとうございます。


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