不良彼氏のモテ期

斗花

小さな

第1話

二年生になって、二ヶ月が経った。

彼氏の保くんがめちゃくちゃモテている。



「彼氏と同じクラスなだけ良いと思いなよ!

ねえ、泰睦?」


「ほんとだよ。

俺たちは恋人と、クラスはおろか学年だって違うのにさ」



クラスメイトの伊代ちゃんと泰睦が落ち込む私を慰める。


……あれ?これって、慰めるって言うのか?



私、尾木おぎ椎夏しいかは今年から高校二年生の女子高生だ。


長所は笑顔!短所は身長。


中一で止まった身長は146cmしかない。



伊代ちゃんは学年で一番可愛い女の子。

泰睦は学年で一番カッコいい男の子。



二人とは二年生で同じクラスになった。



泰睦は彼氏の親友で、しばらくは「伊達くん」と苗字で呼んでいたけど、あまりに私に冷たくしてくるから私も下の名前で呼んでやることにした。



彼氏の菅野すがのたもつくんは長所は身長で、短所は遅刻癖だ。


186cmの身長はまだ止まってないらしい。


なんなら高一から高二でも5cm近く伸びたって言っていた。



「で?保の下駄箱にラブレターが入ってるのを見ちゃった、と?」



伊代ちゃんの質問に頷き私は机に突っ伏す。



彼氏の保くんは毎日遅刻するし、喧嘩もするし、すぐに授業をサボるから一年生の時は皆んなから怖いって恐れられていた。


だけど、保くんはその見た目や生活態度と打って変わって基本的にめちゃくちゃ優しい。



そんな『ギャップ』に触れた女子たちから去年の終わりから今年にかけて、とにかくモテている。



「……わたし、このままだと保くんに捨てられちゃう」


「たしかに、しぃちゃんは保を好きだって騒いでる女子達と比べると、地味で色気がなくてアホだよね」



泰睦の言葉にショックを受ける私の頭を伊代ちゃんは優しく撫でた。



「な、なんでそんなに泰睦って冷たいの?!」


「俺の保の彼女のくせにマジでポンコツなのが気に食わないから」



保くんは男にもモテている……!



ちなみに泰睦の彼女の片岡先輩はおしとやかで、色気あふれる、我が校初の女性生徒会長です。



「たしかに泰睦のタイプって、しぃとは真逆だわ」



伊代ちゃんが納得したような声を出す。

……どうせ私は色気ゼロだよ。



だから保くんも私に、全然手を出してこないしさ。



「しぃー!おはよ!!

おっ!今日は俺、ギリギリセーフじゃん!」



噂をすればなんちゃら。

保くんはチャイムが鳴るのとほぼ同時に教室に入ってきた。

そして保くんは私の隣の席に座る。



泰睦と伊代ちゃんは自分の席に戻っていく。



「保くん、セーフだね!隣の席なの嬉しいなあ」


「しぃの隣のやつが席変わってくれて良かったよ」



保くんは割と堂々と私への想いを色んな人に伝える。


しぃは俺の彼女とか、しぃは世界で一番可愛いとか、普通の男子高校生なら照れて言えないようなことを平然と言ってくる。


そしてそういうところもギャップと言われてしまう所以だ。


私のことを好きな菅野保くんが、とてもモテてる現実……!



「……あ、あのさ、保くん。

ごめん、見る気はなかったんだけど、保くんの下駄箱にさ、その……。


……な、なんか、入ってなかった?」



朝のホームルームが終わった後、私は小さい声で保くんに聞く。


保くんは少し悩んでから思い出したように鞄から手紙を取り出した。



「あぁ!入ってたな、そーいえば。これだろ?」


「あ!そ、そう!それ!

……それ、な、な、なに?」


「え?なんだろ」



保くんの笑顔が文章を読むごとに消えていった。



「た、たもつくん……?」


「え?あぁ。

ごめん次の授業、俺、選択化学だから移動だわ」



話逸らされた……!

しかも、手紙を持って行ってしまった……!



「ねえ、一士はじめくん、河田さんってどんな子か知ってる……?」



手紙の差出人だけは朝、ラブレターを確認したときに見た。


逆隣の席の保くんといつもつるんでる男友達に聞くと笑顔で頷く。



「うん、知ってる。

俺、一年の時同じクラスだったよ!

髪の毛くるくるの茶髪で割と目立つ感じの子。ギャルだな!


良い子だけど、見た目が派手だからちょっと誤解されやすいタイプ。


しぃちゃん、仲良くなりたいの?」



ギャル……。派手……。良い子……。


……せめて、悪い子であって欲しかったとか、思っちゃう私が悪い子だな……。



「ちなみにエロい?」


「は?!え、なんで?!知らないよ!」


「その……、色気的な」



私のことを一士くんな訝しげに見る。



「スタイルは良いけど…。

俺はあんまり興味ないから、そういうのは泰睦に聞く方がいいと思う」



私がため息をついて頷くと、一士くんは更に不思議そうにした。


生物の授業はこれっぽっちも頭に入らなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る