変化
第10話
彼に手を引かれて歩いていくと、随分と人気のない場所まで来た。
妹たちも待ってると思うしそろそろ帰りたいんだけど、どこまで歩かされるんだろう。
よし、ここはひとつ話しかけてみよう。
「あの、どこまで、ぶへ!」
話しかけようとしたら急に彼が立ち止まったのでぶつかってしまった。変な声出ちゃったよ。急に止まったから仕方ないとも思うが、ぶつかってしまったのは事実なので、とりあえず謝ろうと急いで顔をあげる。
「す、すみませ、、、、、、」
「入って」
いや、せめて謝罪の言葉くらい言わせてよ。何も遮らなくてもと思ったが、また手を引かれてしまったので大人しく着いていく。
部屋に入る前にちらっと扉の横に着いていた札を見ると「生徒会室」と書かれていた。
中に入ると、奥に机があり、中央には応接用っぽい机とソファが置いてあった。部屋の中には2人男の子がいた。
ひとりはソファに座っており、明るめの茶髪で、目元に泣きぼくろがありどこか妖艶な雰囲気を纏っている男の子が座っていた。
その近くで、お茶を用意している男の子はふんわりとした焦げ茶の髪で、こちらを見てふんわりと微笑んでいる。柔和で物腰柔らかそうな雰囲気だ。
雰囲気は全く違うが、2人とも整った顔立ちでどこか似ているような気がする。
「あれ、もう連れてきたの?」
ソファに座っている男の人が、口を開いた。驚いた風に言っているが、その顔はどこか楽しそうで少し胡散臭い。
初対面で失礼だが、この人はあんまり信じちゃいけない人だと本能的に悟った。うん、気をつけよう。
「ああ」
私の隣に立っていた婚約者(仮)が答える。もうってこと私は元々連れてこられることが確定していたってこと?解せぬ。
「いつか連れてくるだろうとは思ってたけど、こんなに早いとは思わなかったわ」
先程胡散臭い認定をさせていただいた男の子が楽しそうにクツクツと笑いながらこちらを見てくる。
いや、何この状況。よく分からないまま着いてきてしまったが、妹たちも待ってるしここはお暇させてもらおう。何となく嫌な予感がする。
「あの、来たばかりで申し訳ないのですがそろそろ帰らしていただいてもよろしいでしょうか?」
婚約者(仮)に手を離してくれと言う意もこめて伝えたが、手が離される気配も何か言う気配もない。
「まぁ、そう言わずにちょうどお茶が入ったので一杯だけでも飲んでいってください」
困っていたら、焦げ茶の髪の男の子がふんわりと微笑みながら答えてくれた。なんか、心が浄化されるような微笑みだ。
つい頷きそうになったが、妹たちも待っているし帰ると伝えようとしたら、掴まれたまだった手を軽く引かれて、ソファに座らされていた。
空を見上げて まめきち @umepi
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