第2話

妹達とおじいちゃんの部屋の前まで来た。



呼び出されることはなかなかないので、重要な話なのだろう。なんだか少し緊張してしまう。



気を引き締めて、襖の奥にいるおじいちゃんに声をかける。



「実梨(みのり)です。」



それに続いて、妹達も声を出す。



「結です。」

「紬です。」


「お話を伺いに来ました。」

「入っていいぞ。」



中から低い声が聞こえる。

その声を聞いてから、襖を開ける。




「「「失礼します。」」」


中に入り、正座をする。



相変わらず、70歳を超えてるとは思えないほど若々しい。

着物に身を包み、圧倒的なオーラを纏ってる。




何を言われるのか全く予想がつかなかったので、少し緊張しながらおじいちゃんの言葉を待った。





「まずは、実梨入学おめでとう。」


「ありがとうございます。組長。」


「結と紬も進級おめでとう。」


「「ありがとうございます。」」



本題が言われるのかと思ったら、言われなかったので少し緊張の糸が緩んでしまった。




また、緩んだ気持ちを引き締めて次の言葉を待っていると


「そうかしこまらなくも良い。いつもどうりで良いぞ。」


とにこやかに言われた。



こう言うということは深刻な話ではないのだろう。



おじいちゃんが言うようにいつも通りに話し掛ける。



「じゃあいつも通りに話すね。おじいちゃん、話って何?」




気になっていたので、本題を聞くとおじいちゃんが少し間を開けてから話し出した。



「実梨の婚約者についてだ。」

「「「え?」」」


三人揃って素っ頓狂な声を出してしまった。





婚約者!?待って、そんな人いたの?少しパニック状態になっていると




「どういうこと?おじいちゃん。」



むーちゃんが口を開いた。




「相手は月城組の若頭じゃ。ちょうど実梨と同い年だったかな。」



なるほど、そういう事か。


「つまり、政略結婚って事?」



むーちゃんが私が思っていた言葉をおじいちゃんに聞く。



私の家は、『天沢組』という所謂極道の家だ。

おじいちゃんは組長で、私の家は全国No.2


そして私の婚約者がいるらしいという『月城組』は全国No.1


組長同士が幼なじみらしく、仲は悪くは無いので政略結婚の意味はあまりない気がする。



しかし、この家が勢力的に大きくなるのは確かだ。



私はこの家のためならなんでもやると決めているから、政略結婚でもなんでもいい。この家のためになるのなら。



「いや、政略結婚では無いぞ。」


「え?」




思っていた答えとは違い思わず声を出してしまった。



「じゃあどういうことー?」



次はつーちゃんが質問する。



「月城の所とうちはまぁそれなりに付き合いがあるのは知ってるな。それで昔、自分達の子供か孫の性別が違ったら結婚させようという話になっての。」




え?そんな軽い感じなの?もっと色々あるのかと思ってたのに、少し拍子抜けだ。





「それで、子供は男同士だったが孫は性別が違ったからこの話がまた浮かんできたというわけじゃ。」





なるほど、そういう事か。




「でも、なんで今話したの?」




疑問に思ったことを聞いてみる。



「それはな……」




何か重要なことなのか妙に間をあけるおじいちゃん。




「学校が同じだからじゃ!」


ニカッと笑顔で無邪気に言い放つおじいちゃん。





「「「え?」」」





本日何回目の驚きだろうか。なんかもうびっくりしすぎて逆に冷静になりそう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る