第5話 惚れさせゲーム

 卒業式後の教室。

 きれいになった教室で3人が集まっている。

 

 「結果発表~」


 最初の時と違ってノリがいい。

 みんな勝ちを確信した顔してる。


 「せーので言おっか!」


 教室の外でそれを聞く僕。

 やっとこの日がきた、僕もこの日を待っていた。


「せーのっ」


 浜辺さんの声を合図に手が上がる、3の手が。


 「「「うん?」」」


 全員が首をかしげ。


 「あたし告白されてOKしたよ?朝の河川敷で」


 「私も放課後の図書室で、『好きです』って」


 「うちもされたよ~公園のベンチで2人で座ってる時に」


 一瞬の静寂。


 「「「は?」」」


 全員の顔が困惑に染まる。


 「ちょっと待って、あたしがアッキーの彼女だよ?」


 「いえ私が彰人の彼女よ?」


 「うちがアキ君の彼女なんだけど」


 十数分の混乱そして……


 「これ彼を呼んだ方が早いわ」


 やっと僕の気持ちを言う時が来た。この時をどれだけ想像したか。

 彼女らに呼ばれる前に教室の中に入る。


 「「「ちょっと」」」


 こめかみをぴくつかせた3人。

 

 足が震えそうになるけど何とか立つ。

 僕は3か月前とは違う。


 「……どういうこと?」


 僕の周りを3人が囲んでいる。

 これまでの顛末を話しここからが本番だ。


「僕と付き合ってくれてありがと!だから別れてほしい!」


 彼女らより先に別れを切り出す。

 これが僕のしたかった仕返し。


 「「「なっ!?」」」


 3人は目を丸めて絶句。

 

 「じゃ、じゃあそういうことだから」

 

 高校生になったら彼女たちと会うことはない。

 今も足が震えてる。やっぱ僕はまだまだだ。


 そう思って教室を出ようとして3人に袖を引っ張られる。

 怪訝に思い後ろを振り返れば笑顔の3人。なんか怖い。


「嫌よ」

「あたしも嫌」

「うちもいーや」


 ……え?


「だから別れないって言ってるの」


 櫻井さんの言葉に全員が頷く。


 「は?」


 「ゲームだからって好きじゃないのにキスなんてする訳ないじゃない、別れないわよ?」


 暗い目をした櫻井さんがそう言えば、


 「嘘でするわけないよあたしは好きなの。それにあたしともキスしてるし」


 そう浜辺さんが対抗し、


 「うちとこのまま付き合お?うちもアキ君とキスしたし胸だって触られたんだから」


 冬月さんが腕に胸を押し付けてくる。

 またまた静寂。


 「「「全員に手を出したの?」」」


 彼女達の目が怖い。


 「……だって彼女だし」


 どうせ別れるなら行ける所までって思って。

 彼女らとの関係もあと数日だし……ね?


 「さいってー」

 「この世のクズー」

 「乙女心を弄んで」


 さすがにこれは言い返す。

 

 「3人だって告白ゲームとか言って僕の男心を弄んだからね?!」


 心当たりあるからか全員黙り込む。

 ……まぁつまりお互い悪いのだ。だからここで手打ちになる、僕はそう思ってたんだけどそうは問屋が下ろさない。


 「こんなクズ、あなたたちに押し付けるわけにいかないし私がもらうわ」


 「真面目な春奈にこんなクズの彼氏はだめ、あたしが矯正しとくわ」


 「ねぇアキ君うちとこのまま付き合えばおっぱい揉めるよ?」


 「「なッ?!」」


 櫻井さんと浜辺さんが戦慄してる。


 「ちょっとレイカ抜け駆けしない」


 そもそも待ってほしい。

 

 「みんな高校違うから別れるんでしょ?」


 全員が顔を見合わせ……


 「何言ってるの?彰人が合格した高校って私たちも行くんだよ」


 私たち?


 「うちらも」


 ま、まじ?

 4人全員一緒?


「高校一緒だから別れる理由にならないの。それに乙女の初めて奪った訳だし」

 

 「……これはアッキーを誰が惚れさせるか『惚れさせゲーム』しないといけないなー」


 はい!?


「「「この人の彼女は私あたし/うちだから」」」


 姉さんどうしよう。告白ゲームで全員と付き合ってフったら修羅場になってるんだけど。

 なんかこれ最初より状況悪化してない? 


 

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告白ゲーム~カーストトップの陽キャ女子が陰キャな僕を賭けの対象にしてたので、努力してわからせた結果修羅場になったんだけどどうしよう~ 湊カケル @kakeruminato1118

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