第3話 変化に気づく


 「井中君……最近ちょっと力ついた?前は私と同じくらいしか本持てなかったのに」


 彼女らの告白ゲームがスタートして、はや1か月。

 その間もトレーニングは続けていた。

 僕の身体つきも少し変わり、変化に最初に気づいたのは櫻井さんだった。


 「……そうかな?」


 図書委員の仕事も体力がついたおかげで早くこなせるようになり、その余った時間でより勉強した。

 分からないところは、たまに櫻井さんが教えてくれたりして、


 「1か月前よりは理解が早くなったわね」


 「さ、櫻井さんに何度も同じ質問をして煩わせたくなくて、さ。勉強してるんだ!」


 「いい心がけね、努力してる人は嫌いじゃないわ」


 姉さんが言っていた。

 人は聞かれて、頼られて、感謝されて嫌な人はいない、と。

 まずはそうやって好感を稼げ、と。


 「井中君それ違うよ、そこの解き方はね……」


 頻度こそ減ったけどまだ勉強も教えられてばかりだ。

 櫻井さんの教え方はわかりやすいから、告白ゲームのことを除いてもためになる。


 「……井中君、雰囲気少し変わった?」


 そんな彼女の言葉は僕の耳に入らなかった。

 まだだもっと僕は頑張らないといけない。

 


 浜辺さんとの体育の授業では……


 「あれー少し痩せたー?」


 浜辺さんとストレッチしてる時に、気づいたら身体をみられてた。


 「柔軟とかしてるから……ね」


 「へ~、まぁいいんじゃね?」


 目を少し丸め、感心したように話す浜辺さん。

 だけどすぐにいつも以上に身体を押し付けてくる。


 「でももっと柔らかくなるでしょー?」


 「ぐふっ?!」


 「あはは情けない声~」


 いまだ馬鹿にされる。

 それで悔しくて精一杯走るけど。


 「わーお。体力ついてきたんじゃなーい?」


 冬だからか肺が少し痛い。今僕にできる全力は尽くした、だけどまだまだ遅い。

 速くなったといっても、女子の平均レベルになったくらいで男子ではまだ最下位争いをしてる。

 でも着実に成果は出てきた。


 「まだまだ私の方が速いわね?」


 浜辺さんイラっとするけどぐっとこらえる。

 姉さんにいわれたことを思い出せ。

 

 「さすが浜辺さんだね頑張って認めてもらえるように頑張るよ!」


 基本は相手を褒めろ、と。

 自分のおかげで何かができるようになった、と言われて嫌な人はいないと。


 「まぁ井中君も頑張ったら?そしたらあたしもほめてあげなくもないよん」


 照れたように顔を背けてまた走りに行く浜辺さん。

 でもまだだ。もっともっと頑張らなきゃ。

 


 冬月さんとも一緒に帰ったりしている。

 

 「『りぜろ』おもろかったけど、なかなかトラウマになったわー」


 「そうだよね、ごめん。僕もどんな系が好きか聞けばよかった」


 「面白かったしいいんだけどさー、うちああいう系も案外嫌いじゃないしー」


 「そっか、それで今度は僕から聞きたいんだけどさ」


 冬月さんには2週間前くらいにスキンケアについて聞いてみた。ニキビとかそういうのに効くやつ。

 姉さん曰く、『相手はあんたに興味があるって示してきた、ならあんたも返して、実際にそれをしなさい、と』


 同じ行動をしたりすることによって好意を得やすくなる、みたいなことらしい。

 『ミラーリング』とか言ってた。


 「井中、肌の調子よさそうじゃーん?」


 「ふ、冬月さんのやつ使ってみたから、かな……」


 「でしょー?うちのおすすめ聞いといてよかったっしょー?」


 「う、うんありがとう」


 目を見て気持ちを伝える。

 するとぷいっと目を逸らされ、


 「そんな恥ずいこといわなくてもいいよーばーか」


 恥ずかしいこと、か。

 まぁそうだよね、冬月さんたちにとってこれはゲームの一環だからね感謝されても恥ずかしいよね。

 

 まだまだもっと自分磨きをして驚かせよう、そう決めた。



 その頃の3人の心情はと言うと……


 櫻井春奈「私とはまだちょっと釣り合わないわねー、」

 浜辺夏美「まぁ頑張りは認めてあげなくもないかなー?」

 冬月レイカ「うちの言う通りにするなんて可愛いところもあるじゃん」

 

 

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