第36話 ポータブルダンジョン①
「ミャー」
「ガウ〜」
「メ゛エ〜」
いつの間にか仲直りしたらしい3匹がオヤツの入った皿を掲げて謎の踊りを踊っている…何の儀式?
ちゃんと分け合って食べるんだよ?
とりあえず僕らのレベルアップについてはこれくらい。
後はゴーレムダンジョン及び異空間ダンジョンのクリア報酬についてだけど…細かい素材や魔石、金貨や銀貨は別にして、特筆すべき物が一つ。
名称: ポータブルダンジョンコア(Lv.1)
分類: 設置型アイテム(中級~上級)
概要: ポータブルダンジョンコアは、自分専用の私設ダンジョンを作成・管理できる、極めて貴重なアイテムです。使用者が指定した任意の空間(広場、廃ビル、地下室など)に設置し起動することで、周囲の空間を位相的に隔離し、コアのスペックに応じた階層と環境を持つ擬似的な異界へと変換します。
🌟 特徴
プライベートトレーニングエリア: 外部からの侵入を完全に遮断し、時間効率の高い安全な訓練場として機能します。
素材・魔力源の生成: ダンジョン内で生成される魔物や採掘ポイントは、コアが持つ魔力によりリサイクルされ、永続的な素材供給源となります。
成長システム: **(Lv.1)**の初期状態では最大3階層までしか生成できませんが、特殊な魔石や大量の魔力を投入することでコアをアップグレードし、より深く、より高難易度のダンジョンへと拡張可能です。
難易度調整機能: コアを通じて、出現する魔物の種類や数を設定できます。
⚠️ 使用上の注意:設置には半径20メートル以上の未登録の土地が必要です。
稼働中は常時、莫大な魔力(一人前の冒険者5人分の合計魔力に匹敵)を消費します。
価格: 時価 \800,000,000 ~ \1,200,000,000
(流通量が極めて少なく、市場価格は変動します。主にギルドや国家間で取引されています。)
(※ダンジョン庁のデータベース調べ)
「いち、じゅう、ひゃく…ははは、8億!?」
というか時価!?
試しにスマホのオークションサイトで検索してみると、1,800,000,000とかいう数字が見えたので、アプリをそっと閉じた…上がってるじゃん!
どうしたものか…
(そうなると…勇人にも半分の権利はあるよね?よし、責任を分散しよう)
そう思い、RINEで連絡してみる…『まかせる』いや任せないで!?
──話し合いの結果、そんな面白そうなものなら、売らずに使ってみようという事になった。
夏休み開けに3人(勇人、敦、奏)でチャレンジするから、それ迄に作っておいてくれとのこと。
因みに2人の修行は順調らしい。
やっぱり仲いいよね君等?
勇人は兎も角、敦は宿題とか大丈夫だろうか…後で注意を促しておいた方が良いかも知れない。
まあ、正直僕も興味はあるし、それはいいんだけど…さて、問題は何処に設置するかなんだよな。
半径20メートルの土地ねえ。
(ガチャガチャ…ガチャ!)
…うん?
今、玄関のドアが開く音がしたな、母さんかな?
丁度いいや、相談して…
「たっだいまー!」
え?え?誰?…ただいま?
(トットットットッ)
混乱する僕を余所に、その聞き慣れない声の誰かは階段を慣れたテンポで上がってくると、そのまま僕の部屋のドアを開ける。
(ガチャ!)
「奏〜、お兄ちゃんだよ〜」
「だから先ずノックしろと…え?兄?」
そこにいたのは、青い髪の少女だった。
光沢のあるストレートのロングヘア。
側頭部からは剣のように真っ直ぐな角が2本。
小柄ながらもメリハリのある引き締まった身体にセーラー服を纏っている。
制服のスカートからは、可愛いらしい小さい尻尾が覗き、感情に合わせてピクピクと動いている。
そして何より、無駄に自身に満ち溢れた爽やかな笑顔。
(これは…間違いない。性別が変わって大分変わってるけど)
「兄さん!いや、姉さん?」
「どっちでもいいよ」
そこにいたのは紛れもなく、僕の兄(姉)、繰生 奏音(くりう かのん)だった。
「なんで帰って来たの?母さんからは夏休みもずっと寮に居るって聞いてたのに」
「そりゃもちろん、可愛い弟(妹)が心配で」
「そういうのいいから………何やらかした?」
「信用ないな〜」
「どの口が言うかな」
前にもちょっと言ったけど、この兄(姉)、一言で言うと【大胆でノリの良いストレートなナンパ師】である。
小学生…いやひょっとしたら幼稚園児の頃から、大の女の子好き。
幼稚園時代に保育士の先生にプロポーズした話から、女子児童達と次々に三角、四角、五角関係になった話を皮切りに、小学生になってからも次から次へと女性関係でトラブルを起こしまくり…。
僕も巻き込まれて酷い目に遭ったのは一度や二度じゃない。
高校になって母さんに全寮制の男子校に放り込まれたのも、その度を過ぎた女好きが原因の一つではあると思う。
まあ将来は専業探索者になるつもりと言ってたから、探索者養成高等学校に行きたかったのは本当みたいだけど。
(カチャ)
「はい、ミルクと砂糖アリアリのココア…いつも思うんだけど、甘くないの?」
とりあえずリビングに場所を移して、兄の好きなココアを入れる。
…煌?そんな必死でオヤツを分けるかどうか悩まなくて良いからね?
「頭を使うと、甘い物が欲しくなるんだよねえ…この子達が、奏の眷属達かい?ありがとね」
兄が煌を膝の上に抱き上げてオヤツを貰っている。
何故か煌は怪訝そうだが。
…そう言えば、いつの間にかゼルガドリス様の人格は眠りについたようだ、今は本来の煌の人格らしい。
「それにしても…」
そう言ってこちらをジロジロと見てくる兄(姉)。
…ややこしいな、もう姉で統一しよう。
「な、何?」
「いや、可愛くなったな〜と、あ、前は可愛くなかったとかじゃないからな?どっちも可愛い…ふむ」
(ちょいちょい)
そう言うと、何やら手招きをする兄。
「…何?」
呼ばれるままに近付くと、そのまま何故か膝の上に、僕の膝の上に煌が乗せられ…いや何だコレ。
「なにこれ」
「いや、抱き心地を確認しようかと、ふふ」
そう言って後ろから抱きすくめて来る兄。
なんというか、この人今も昔もやたらと距離感が近いのだよなあ…しかもこれを誰彼構わず(女の子限定)やるもんだから。
…煌?何故かどんどん『解せぬ』って顔になってるのは何故?
「すーっ…」
「嗅ぐな!」
「それで結局、本題はなんなの」
「いや、奏の様子を見に来たのも嘘じゃ無いんだよ?いきなり女の子になっちゃって、困ってることは無いかな〜と」
「はいはい」
「煌ちゃ~ん、妹が塩対応だよお」
「ミャ、ミャア」
「さて、それはさておき…ちょっと学校で困ってる事があってね」
学校で?
「学校でって事は、ダンジョン探索実習のこと?」
「うん、その事で…母さんのツテを使わせて貰えないかなって」
「母さんなら、夕方には一度戻って来るって言ってたけど…何があったの?」
「う~んと、そうだな…奏、もうお祖父ちゃんには会った?」
「?…いや、まだだけど。今度母さんが一度会いに行くって言ってた」
「あ~、じゃあそうだな…父さんの実家、竜崎家が何百年も前からこの国に根付いてる、竜人族の家系だって事は知ってるよね?それで…」
に…姉さんの話を総合すると。
竜崎家はこの国における竜人族の纏め役である名家で、政財界に強い影響力を持つ。
その影響力はこの国に住む全ての竜人族に遍く及んでいる…竜人族だけでなく、ドラゴン達にも。
竜崎家と縁を結びたい竜人族やドラゴンは沢山おり、竜崎家の血縁に女の子が産まれると、何が何でも取り込もうとする。
(さっきゼルガドリス様が言っていた、結婚の申し込みが殺到するって話もここに繋がる訳だ)
そして、昔は当人の意思など無視して、文字通り竜人族の男とドラゴンの雄達で血で血を洗う戦いの末に、勝ち残った者がその子を嫁にする…何度も言うが、本人の意思など無視してだ。
流石に近年になってこれは酷すぎると、竜崎家指導で協定が結ばれ、その子が適齢期になるまでは手出し無用という掟というか、相互不可侵条約が定められた。
「ただ、これには抜け道が幾つかあるんだ」
そう言って、姉さんが取り出したのはDカード。
「見ていいの?」
一応、姉さんに確認してカードを覗き込む、どれどれ…
Namu:繰生 奏音(くりう かのん)
Job:龍騎兵
skill:種族:
Equipment:機械式魔導槍『ワルプルギス』(未完成) 強化外骨格スーツ『蒼穹』 携帯式ポリカーボネートシールド
Rideable Dragon:なし
・機械式魔導槍『ワルプルギス』
分類:重魔導兵器(プロトタイプ)
概要:歯車、シリンダー、魔力供給チューブが複雑に絡み合った、全長約 3 メートルの巨大な槍型兵器。膨大な魔力を圧縮・増幅し、**「振動魔力弾」**として射出することを目的とする。
コア機構:起動には、希少な「星詠石(せいようせき)」を核とした魔力増幅炉を必要とする。現在のプロトタイプは、その出力制御に重大な欠陥を抱えており、連続射撃は不可能。
運用リスク:一度の最大出力で都市型シールドをも貫通する威力を発揮するが、その反動で機体がオーバーロードし、使用者にも重度の魔力疲労と物理的負荷をかける。現状では、文字通りの「一撃必殺・自爆覚悟」の切り札。
命名理由:開発チームが、その制御不能な破滅的パワーを、魔女たちが狂乱する夜会「ワルプルギスの夜」になぞらえたため。
・強化外骨格スーツ『蒼穹(そうきゅう)』
分類:戦術型パワードスーツ / 個人用魔力増幅アーマー
概要:特殊合金と高密度カーボンで構成された流線型の全身スーツ。着用者の運動能力、筋力、反射速度を、平均で通常の 5 ~ 10 倍に向上させる。
動力源:背部に搭載された小型の**「環境魔力変換装置(AMCS)」**。大気中に漂う微弱な魔力(エーテル)を収集・精製し、活動エネルギーとする。
特殊機能 * [リアクティブ・マッスル・システム]: G(重力)や衝撃に応じて人工筋肉が自動で収縮・拡張し、高機動戦闘時の負荷から着用者を保護。* [視覚統合インターフェース]: ヘルメットのバイザーが、熱源、魔力残滓、敵の弱点などをリアルタイムで分析・表示する。
コンセプト:「空」を意味する名の通り、対空戦闘や高所からの奇襲を想定して開発された。青を基調としたカラーリングは、空に溶け込むステルス性能を高めるための特殊コーティングによる。
・携帯式ポリカーボネートシールド
分類:軽量・複合素材製 防護装備
概要:特殊な処理を施した多層ポリカーボネートを主材とする、中型の携行型シールド。一般の防弾・対爆装備として広く普及している。
特性:* 耐衝撃性: 現代の小口径銃弾や爆発の破片はもちろん、初歩的な火炎魔法や衝撃波系の魔術にも耐える。
* 視認性: 外層は透明度が高く、防御中でも広い視野を確保できる。
魔法的応用:シールドの表面には、微細な魔力回路がエッチングされており、魔導師がこれを触媒として使用することで、**「短時間の結界展開」や「魔力吸収コーティング」**などのエンチャント(付与魔法)が可能になる。
弱点:物理的な斬撃や貫通力に特化した魔導武器(例:魔力刃、高出力の『ワルプルギス』など)に対しては、比較的容易に破壊される。あくまで「標準的な脅威」に対する防御である。
「へえ…龍騎兵?かっこいい…ん?」
…Rideable Dragon(騎竜)、なし?
「そう、龍騎兵は自分のドラゴンがいなければ100%のパフォーマンスは発揮できない…それで、騎竜をテイムする為に、ドラゴン系のモンスターが出るダンジョンに行ってみたんだけど…」
ああ…そういう事?
「…うん、騎竜になって、公私共にパートナーになれば…って輩が…ドラゴンから竜人までズラーッと並んでて…」
「うわ…どうしたのそれ」
「どうもこうも、僕は女の子が好きなんだって言って、お断りしたけど…諦めてくれないんだよねえ、これが」
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