第25話 視線の先に
……ただ、それにしても――
「……それにしても、よくバレなかったよね」
「……確かに。大声ではないにしても、途中からわりと普通に話してましたしね、私達」
「……うん、ほんとにね」
……あと、バレなかったと言えば――
「まあ、幸い声が聴こえなかったのはともかく……これは、なんでバレなかったんだろ? 流石に、気付かないはずないよね」
「……ああ、それですか」
そう、視線を落とし口にする。つい先ほどまで教科書やノートが置かれていた、蒔野さんの席へと視線を落として。
これが、別の席――例えば、窓際の席であれば話は変わる。だけど、ここは廊下側の席――そして、先輩はまさしくこの傍を通っていた。意識せずとも、視界に入らないはずもないかと――
「……ですが、それほど不思議なことではないかもしれません。
「……そう、なんだね」
「そして、もし気が付いていたとしても、彼女の視界に映っていたのは私の教科書やノート――それと、もしかすると私の鞄くらいでしょう。
「……なるほど」
僕の疑問に、理路整然と説明をしてくれる蒔野さん。なるほど、そう言われるとそうなのかも。ただ、それにしても……うん、やっぱりすごいね蒔野さん。なんか、自分が馬鹿みたいに思えてくる。
「さて、帰りましょうか先生」
「うん、そうだね蒔野さん」
ともあれ、そう告げ背を向ける蒔野さんに頷き答える僕。……ふぅ、今日はどっと疲れた……まあ、自分のせいではあるんだけど。……うん、今更ながら、申し訳ありません
「――あ、そう言えば由良先生」
すると、ふとこちらを振り返る蒔野さん。そして、どうしてかその表情は何とも愉しそうで……あれ、なんだかものすごく嫌な予感が――
「――感触はいかがでしたか?」
「お願いですから勘弁してください!」
「………………」
ある平日の夕さり頃。
四階の窓から、正門の辺りを見つめる私。いや、正確には――茜に染まる空の下、正門を通らんとする一対の男女の姿を。
一人は、肩ほどまで伸びる黒髪を纏う女子生徒。遠目からでも分かる、驚くほどに綺麗な女の子。そして、もう一人――こちらも、遠目からでも分かる秀麗な男性教師。そして、こちらは私の良く知る――
「…………」
じっと、二人を見つめる。見た感じ、女子生徒が男性教師を
――トゥルルル。
ふと、ポケットから響く電子音。徐にスマホを取り出し画面を見ると、発信主は……まあ、そうだと思ったけど。ともあれ、応答ボタンに指を添える。そして――
「――ねえ、
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