第5話 状況確認

 何かがおかしい。

 俺はショックのあまり無意識にコレクターズの世界にログインしてしまったのだろうか。

 いや、それだけで納得できるものではない。

 目に入るまわりの人々も、風景も、空の青さも、頬に感じる風の心地よさも、何もかもがやけにリアルだった。


 俺はステータスパネルを開こうとして、すぐに異変に気づいた。

 パネルが開かない。

 それどころか会話パネルも開かない。


「どうなってるんだ……」


 道行く人々を眺めながら呆然としているとあることに気づいた。

 ふつう街の住人はNPCであり、プレイヤーである俺たちが話しかけないかぎり、言葉を発することがない。

 だが、目の前の人々はまるで生きた人間のようにおしゃべりをし、そしてその口もとも細かく動いている。

 こんな機能はコレクターズには実装されていなかった。

 つまり、ゲームではありえないことが起こっているというわけだ。


 俺は試しに自分の頬をつまんでみた。

 痛い。

 おかしい。

 ゲームであれば痛覚はもちろん、五感までリアルに感じられるはずがなかった。

 信じられないことだけれども、どうやらここは現実に存在する世界のようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る