第15話 大金――そして椎名凪斗の決断
サキさんと分かれて3時間。
俺は2階層でずっと探索を続けていた。
スライムやチビヒキコウモリ、たまに現れるケツマッカチビスパイダーとドブデッパキショネズミ。
それらを倒して進んで倒して進んで。
そして俺は気付いてしまった。
「やべぇつまんない……」
俺が今やっているのは、雑魚モンスターを気付かれる事なく後ろから刺して倒す、ただそれだけ。
戦闘ではなく、ただの作業みたいになってる。
異常個体との戦いが頭から離れない。
あの時のドキドキワクワク感が欲しい。
アドレナリンが出てるなって実感が欲しい。
「これ……一気に階層降りようかな?」
危険なのは分かってるけど、その危険が今の俺は欲しい。
「……っちょっと頭おかしくなったか俺」
少しハイになっている気がする。
どうもアッパー系探索者です。
「今日は一旦家に帰って落ち着いた方が良さそうだな」
判断を誤らないよう、今日のところは帰還。
すごく悔しいけど我慢我慢。
「まぁ沢山モンスターは狩ったし、この異常個体の魔石が俺にはある」
これで今日の分は十二分に稼いだでしょう。
別にノルマとか決めてるわけじゃないけど。
「とりあえず、お楽しみの換金タイムだ!!」
俺はダンジョンから出て、魔石の換金をする。
まずはウエストポーチから大量の小さな魔石を取り出す。
つぎにリュックから、本命の大きな魔石を出して受付に渡す。
「これで以上ですね。少々お待ちください~」
思ったより受付の男性がさっぱりしてる。
もっと「おお! 魔石デカいですね!」みたいな反応を期待してた。
このくらいは普通という訳か。
てことはあまり値段は高くない感じか……?
「お待たせしました。では、ご確認ください」
――――――――――――
換金額 505,838円
――――――――――――
「はっ!?」
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん……。
50万!?
「え、この金額あってます?(こんな高いの?)」
「ええ合ってますよ。この大きさと魔石の質はこの値段が妥当です(少ないって文句か?)」
「まじですか……ありがとうございますっ!」
「え? ああはい(どういうこと……)」
俺は封筒に入れられた50万円を受け取り、のこりは財布に入れてベンチに座る。
「おいマジかよ……これ本当に受け取っていいお金なのかよ……」
なんか分かんないけど悪い事した気分。
闇バイトってこんな気持ちなのかな。
「これだけあれば魔石専用リュック買えるなぁ……」
いやてか普通に娯楽に使ってもいいよな。
思考が探索者すぎた。
これだけあれば、アニメのアクスタとかタペストリーとかフィギュアいっぱい買えるじゃんか。
ゲームだって買えるし、漫画ラノベも買える。
どうしようかな。何に使おうかな。
1人で封筒を眺めニタニタ笑う。
他の探索者になんだこいつって目線を送られた気がするけど、ムシムシ。
「……よーし、決めた!」
俺は大金を持ってスーパーに向かった。
そこで宮崎牛と高級マンゴーを購入し、家路につく。
「ただいま」
「おかえり――またジャージ?」
「あ、これはその……まぁそんな事よりこれ。プレゼント」
宮崎牛と高級マンゴー、そして5万円が入った袋を母さんに渡す。
「なにこれ……」
「割と大金が入ったからその……お礼と生活費」
「大金……!? ナギト、あんた何やったの!?」
大声を出して焦って訊いてくる母さん。
俺はそんな母さんをなだめるように、全て話す。
探索者のことを。
スキル透明化の実演もかねて。
「探索者って、なに。あんた死ぬわよ!?」
「大丈夫だって。俺にはさっき見せた透明化スキルがあるから」
「でも、ええ? 母さん色々とこんがらがって何が何だか」
「ほんと大丈夫だから安心してほしい。これから俺は探索者で生計を立てていくからさ」
「えー……。母さんはどうしたらいいの?」
「なにもしなくていいよ。ただ見守って欲しい」
「……分かった。いい歳したナギトが決めたことだもんね……」
「なんだその言い方」
「でも本当に無茶だけは辞めてね。危険な事は絶対にしないで。約束よ」
「分かってるって約束約束」
「ほんとにもう……」
こうして、母さんからの許可も得た俺は、探索者を堂々と胸を張ってできることになった。
俺はその後自室に戻り、お金をかぞえる。
「……あと40万円くらいか。残ったお金は……10万くらいをオサムの兄貴の分として、あとは貯金だなぁ」
娯楽に使いたいのは山々だが、探索の効率をぜひとも上げたい。
その為にまずは魔石専用リュックを買わないと。
それを買ったら次は服だね。まぁ服というか防具?
今日ジャージに穴空いちゃったし、なるはやで。
「……とりあえず次は10階層まで一気に行こうかなー」
9階層まではモンスターとフィールドに変化はない。
10階層になってようやく、新モンスターと新フィールドが現れるらしい。
ネットの情報いわく、新モンスターはカエルとかでフィールドが広い平原になるとか。
それは凄く気になる。
あんな洞窟から外に切り替わるって想像がつかない。
「楽しみだなぁ」
期待に胸を膨らませつつ、俺は眠りについた。
フィギュアと漫画に囲まれた、世界一落ち着く部屋で。
――――――――――――――――――――――――
【あとがき】
ここまでこの作品を読んでくれた方、ありがとうございました。
この作品はここまでとなります。
1人でも読んでもらえたことが奇跡です。ただただ感謝です。
個人的に、今回の作品は粗が多かったように思えます。
自分がまだまだ未熟なペーペー+久々の執筆という事もあり、
特に序盤の流れが悪かったと自覚しています。
ですが今年、2025年はバンバン執筆していくので、
もし私の次回作を見かける機会があれば、その時はまたよろしくお願いしますっ!
贅沢をいうと、作者フォローしてもらえると嬉しいです(小声)
以上、松本ショウメンでした。
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【完結】無職、ダンジョン探索者になって無双する~スキル【透明化】はモンスターに気付かれないし、スキル【昼夜逆転】はバフ最強~ 松本ショウメン @MatsuMirai01
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