初めてのダンジョン探索

第4話 初めてのスキル透明化

 

 ダンジョンの入口に着いた俺とオサムの兄貴は警備員に、探索者登録の時に貰うステータスカードを見せて、あとは入るだけとなった。


「これがダンジョンの入口なんですね」

「ああ。生で見ると不思議だろ」


 ダンジョンの入口は、空間そのものにできた裂け目。

 周囲どこから見ても同じ形を保っており、その先は真っ暗闇で何も見えない。


 本当に訳が分からない。

 空間の見えない壁に穴が空いたみたいな、なんとも不思議な光景。


「ネットで何度か見たことはあったんですけど、生で見るのは初めてなんで……なんか恐いですね」

「そうだろうな。俺も最初の頃はビビってた。――あ、ナギトそういや、酔い止めは持ってきてるか?」

「? 持ってきて無いですよ」

「そうか、じゃあまあ仕方ないな」

「どういう事ですか?」

「それは入ってからのお楽しみだ」


 そう言ってオサムの兄貴はダンジョンの入口に近づき、消えた。


「まじかよ……」


 ビビりながらも、俺は入口に向かって勢いよく飛びこむ。

 すると、穴に近づいた瞬間、一瞬で風景が変わる。

 無駄に明るい公園から、少し暗いごつごつした岩肌の洞窟へと。


「うわっ、すご――って、なんだか頭が急に」


 突然。平衡感覚を失い、めまいが一気に俺を襲う。

 そして、


「オエエエエエエ」


 吐いた。


「おお、結構吐いたな。初ゲロおめでとう」

「なんですかこれ……」

「空間の裂け目、ダンジョンの入口に入るとよく起こるダンジョンゲボ現象だ。次元移動で平衡感覚がどうのこうのってやつだな。何回か経験すると吐かなくなるんだが、慣れないうちは入る前に酔い止めを飲むといい」

「そうなんですねっオロロロロロ」


 ――数分後


「それじゃあ、い、いきましょうかオサムの兄貴」

「めまいはもう大丈夫そうか?」

「はいバッチリです」

「そうか良かった。じゃあ進む前に一度ステータスカードを確認してくれ」

「分かりました」


 俺は財布からステータスカードを取り出す。


 ステータスカードはクレジットカードほどの大きさで、厚さは数ミリほど。かなり丈夫な材質で出来ていた。


 多分鉄とかそこらへんの素材で作られてる。詳しくないから分からないけど。


――――――――――――――――――――

 椎名凪斗 27歳 Eランク(仮)

173センチ 痩せ型


Lv.1

HP 95/100

MP 50/50


スキル

・透明化  Lv.4 ・危機察知 Lv.1

・昼夜逆転 Lv.8

――――――――――――――――――――


 おお、なんかすげえ。


 貰った時はちゃんと見てなかったから気付かなかったけど、俺なんかスキルいっぱい持ってんじゃん!


「どうだ、スキルはなにか持っていたか?」

「はい! えーと、透明化と昼夜逆転、それに危機察知ですね」

「おお、そうか。他には?」

「他は特に何も」

「ん、ちょっと見せてくれ」

「どうぞ」


 ステータスカードを渡す。


「本当にこの3つだけか、凄いな」

「凄いんですか!?」

「ああ、すまない。まあ、透明化と昼夜逆転は初めて見たよ」


 あれ、なんか微妙そうな反応……。

 しかもなんで謝ってるんだ。


「もしかして、弱いスキルってことですか?」

「んー。正直言うと、分からないな。この2つのスキルを知識として知ってはいたが、こうして実際に見るのは初めてだからな。本当に強いか弱いか分からん」

「な、なるほど……」


「スキルってのはその人物が経験してきた事とか習慣みたいなものが魔力のもつれによって発現するんだが……透明化や昼夜逆転は大抵、何事も目立ちたくないという意思のもと人生を生きてきた人間に発現しやすいんだ。つまり、そういったスキルを持った人達は探索者にはならないし、いない。だから、分からない」

「よく分かりました(心当たりアリ)」


「一応知ってる範囲で教えるが、透明化は文字通り透明になれるスキルで、昼夜逆転は夜に少しだけバフがかかって朝昼に凄いデバフがかかるらしいぞ。あとは危機察知、これも文字通りのスキルで、危機を察知できる」

「え、昼夜逆転はあれだけど透明化と危機察知強くないですか!?」


 いや聞いてる感じ普通に透明化とかめっちゃ強いじゃん。

 チートじゃん。つよつよじゃん!!!


「まあ一度試してみよう。透明化スキルを使ってみてくれ」

「分かりました!」

「……」

「……」

「……」

「……すみません、どうやって?」

「体を流れる魔力に集中して、頭の中で【スキル透明化】って念じてみるんだ」

「分かりました」


 俺は目を瞑って、魔力に集中する。

 つってもよく分からないから、なんとなくで。


 あとは頭の中でスキル透明化を――。


 ――スキル透明化とかぜってーよえーじゃぁーん!


 あーうるさいうるさい。心の中の心君がまた出てきた。

 集中集中……。


 ――スキル【透明化 】


 お、なんか成功してそうな感覚。

 身体のふちというか、皮膚がピリピリしてていつもと全然違う感じだ。


 目をゆっくりと開けてみる。


「使えたみたいだな」

「ほんとですか! 俺、透明になってます!?」

「いや、んー。なんか薄くなった」

「薄く?」

「ああ。なんか物語の重要キャラがこれから消えていくみたいな、そんな薄さだ」

「え、幽霊ってことですか?」

「幽霊ほど別に薄くもないな。若干後ろが透けて見えるような。じっくり見て目を凝らしたら薄くなってるって分かるくらいだな」

「え、よわ……」


――――――――――――――――――――

 椎名凪斗 27歳 Eランク(仮)

173センチ 痩せ型


Lv.1

HP 95/100

MP 25/50


スキル

・透明化  Lv.4 ・危機察知 Lv.1

・昼夜逆転 Lv.8

――――――――――――――――――――





――――――――――――――――――――――――

本文に書かなかった話


・スキル【危機察知】を主人公が取得したきっかけ――小学生時代、毎晩布団に隠れてゲームをしていた時に、親の足音を集中して聞いていたことで危機を察知できるようになった


・ステータスカードの名前と身長、体型は対応した受付が入力しています。だからこれが酷い受付だと、気分でガリガリとかデブって書かれたりすることもあるとか


あとがき


 この度は読んでいただき、ありがとうございます。

 続きが気になる、面白いと思っていただけたら☆をつけて貰えると嬉しいです。

 踊るくらい喜びます。

――――――――――――――――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る