第3話 メロン肩@破壊神の真実


「本当にいいんですか? こんなに良くしてもらって」

「ははっ! 全然構わんさ!」


 探索者登録が終わった後、メロン肩@破壊神さんがダンジョン探索に付いてきてくれる事となった。


 どうやら登録したての探索者は、誰かほかの探索者(Dランク以上)とダンジョン探索に行って、その人に認めてもらわないと1人で探索ができないらしい。


 俺の今の状態は車でいう仮免許なんだとか。免許持って無いからその例えがピンときてないけど。


 ちなみに探索者のランクは上からS、A、B、C、D、Eの六段階。

 登録した直後は皆、Eランクスタート。


 ステータスの値、探索頻度、依頼達成度、モンスター討伐数、魔石換金総額など様々な要素でランクは変動するらしい。


「でも、帰る予定だったんですよね? お金も出して貰ったのに、わざわざ付いてきてくれるなんて、なんか申し訳ないというか」

「はは、気にするなって! 俺が金を出したいと思ったから出したし、俺が色々教えてやりたいと思ったから付いて行く、ただそれだけだ!」

「なるほど……ありがとうございます……」

「じゃあそろそろダンジョンに行こうか!」


 意気揚々とメロン肩@破壊神さんが歩き出す。

 それに続いて俺もゆっくり付いて行く。


 う~む、どうしよう。なんか若干怖い。

 うまい話には裏があるというし、心配だな……。

 メロン肩@破壊神さんを信用してもいいのだろうか。


「元気ないな。どうしたんだ?」

「いやその」


 少し不安になり、無言になった俺に気付いたメロン肩@破壊神さんが急に立ち止まる。


 そして何かを察したのか一呼吸置いた後、悲しそうに話し出す。


「――兄ちゃんに、俺が色々してやりたいと思うのはな、実は理由があるんだよ……」

「理由……?」

「ああ。……兄ちゃん。俺と同じ……仲間、なんだろ?」

「同じ? 仲間?(え、どゆこと?)」

「こんな素敵な聖夜に1人、探索者登録してたってことは……あれだろ? 俺と同じ、なんだろ……。頼むから皆まで言わせないでくれよ……?」


 そう言ってメロン肩@破壊神さんはつーっと涙を一粒流す。


 まま、まさかメロン肩@破壊神さん……。

 俺と同じで、まさか彼女が……?


「まさか、え? そんな訳無いですよね。冗談は止めて下さいよ」

「冗談じゃあ、ないさ……」

「冗談じゃない? いや、ありえない。ありえるわけがない。だって肩にちっちゃい重機乗せてんだよ? まさかそんな……」

「ふっ、気遣いありがとな。でも、そのまさかなんだよ……。それで俺は兄ちゃんを見かけた時、同情――いや家族にも近い仲間意識を感じてな。何かしてやりたいと、そう思ったんだよ……」

「嘘だ嘘だ。そんなナイスバルクでそんな……筋肉は全てを手に入れられるんじゃ……」

「どうやら違ったみたいなんだ……。現に俺以外のパーティーメンバーはみんな、聖夜だからっていつもより早く帰りやがった。俺以外全員な……」

「そんな……」


 こんなデカくてかっこいい筋肉があってしても、彼女はできない……?

 筋肉があれば何でもできるんじゃないのか!?

 そんな理不尽があっていいのか!?


 なぁ、自己啓発系メンズコーチさんよ!!


「おっといけねぇ空気を重くしちまった。重くするのはダンベルと筋肉への愛だけにしとけってな。まぁ、とにかく俺が言いたいのは、あんま気にしないでくれって事だ。俺がしたいから勝手にしてるだけ。一緒に探索楽しもうや」


 俺はこんないい人を疑ってたのかよ……。


(すぐ人を疑うの厳しいって※メンズコーチボイス)


 くっ、自分が情けない!


「すみません……。考えすぎてました。俺、全力で付いて行きます! 兄貴!」

「おう付いてこい! 今日中に教えられる事は教えてやるぞ!」

「お願いします!」

「おう! ところで兄ちゃん、名前は何て言うんだ?」

「椎名凪斗です」

「ナギトか、今風のカッコいい名前だな。俺は金剛修こんごうおさむだ。好きに呼んでくれ」

「じゃ、じゃあオサムの兄貴でいきます」

「ははっ、長くないかそれ。まあなんでもいいぞ、改めてよろしくナギト!」

「よろしくお願いします、オサムの兄貴!」


 さっきまでの不安が嘘みたいになくなった俺は、オサムの兄貴と共にダンジョンの入口へ向かった。

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