【短編】山で白骨死体を見つけたんだけど隠ぺい工作に参加しました

山野小雪

第1話 白骨死体を発見したんだけど

 

 桜が満開な季節、俺達の通うS**高校では登山という「新入生オリエンテーリング」が行われる。

 これは新入生がクラスメートとの親睦を深めるイベントの1つで、俺達の学校の裏手の山から山頂まで登る。山頂には宿泊施設が用意されており新入生はそこで一晩泊まるというわけだ。

 

 俺は山岳部の3年生であり、前日と当日の新入生の安全と様々なフォローを任せられている。まず前日は素人が登りやすい正確な道順を作るためにきちんと山道にロープを張る。コースアウトされたら命の危険に関わるからだ。

 ちなみにこのイベント、教師たちは全員ロープウェイで山頂まで行く。



 俺と森田君は3年生で同じクラスで気心も知れてる。丁寧にロープを張りながらとりとめもない会話をしている時のことだった。


「おい、佐々木、あれ何だろ?」

 

 突然、森田君が落ち葉や草に覆われた部分を指をさす。俺は指をさされた方向を見るが特に何もないように思った。



 「えっ、別に何もないけど、どうした?」

 「いや、あれ? でもちょっと?」 


 

 森田君は張ったばかりのロープを下からくぐると10メートルくらい西側に向かって注意深く歩き出した。



「おい、どこ行くんだ?」

「ちょっと、佐々木も来てくれ。変なものがある」

「えっ? どうした?」

 


 いくら俺達山岳部員でさえもコースから離れるのは少々危険だ。といっても他の部員が別のエリアのロープ張りの担当をしている。基本、俺達山岳部員は入山するときはトレッキングブーツを履くし、方位磁石は必ず持っている。まあそれなりの装備は常にしている。

 俺は森田君を追いかけた。 



「これ見てくれ」


 

 最初はゴミかと思った。

 一面に樹木や雑草が生い茂っているその上に、ボロボロの衣類が散らばっているのだ。

しかし近づいてさらによく見ると――。 


 ――それは服を着た状態の白骨死体であった。


 

「ちょっと! これって死体じゃん!!」 

 

 

 黒っぽいナイロン製のレインウエアと片足だけは黒いトレッキングブーツを履いていた。片足は骨が見えていたけどボロボロで砕けていた。服装の大きさ的に成人男性だろう。

 山に生息するイノシシに引きずられたのか、とにかく衣類は風雨にさらされてボロボロだった。


 白骨死体だったが風化しているのがわかった。

 頭蓋骨に関しては形はわりとしっかり残っているが他の部分の骨は砕けている事が多いのが印象的だった。

 頭部に髪の毛なんか残っていなかった。


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