聖女の親友の前日譚 2

寮に戻り、私の使える映像魔法によってアンヌマリーの謝罪現場を映し出します。


その様子にリリアーテは呆然とし、口に手を当てながら驚いていました。


「それでね、本題なんだけど。

貴女の力が少しでも増した……なんて事は無いわよね?」


「え……どうなんでしょう?」


アンヌマリーはこれもリリアーテの為だと泣きながら謝罪をしていた。


その言葉の意味は聖女として成長する為に必要な事だという意味であろう。


だが、幾ら何でもリリアーテに嫌がらせをしたくらいでそんな事が……


「あ、見てください!

浄化の光の強さが増してますよ!!」


あり得ない、そう結論づける前にリリアーテが浄化の光を灯す。


この光は範囲内を優しい光で照らし、心身をリラックスさせると共に、徐々に傷を癒していくという素晴らしい魔法である。


私の侍女になった頃から、こうして浄化の光で癒してくれていたのだが、この学園に入学する今まで光の強さが変わることは無かった。


この光を長い期間見てきた私だからそれは断言できる。


そんな光が、見たこともない力強さで煌々と辺りを照らしていた。


その光のお陰で、私のざわついていた心も落ち着きを取り戻し、頭の中がスーッと晴れ渡って冷静になっていく……その上で一つの結論に辿り着いた。


「これは間違いないわね。

アンヌマリー……いえ、アンヌマリー様の嫌がらせは全て貴女のために行われていることよ」


「え、どういうことです?」


「理屈は分からないけれど、貴女が嫌がらせを受けることで聖女の力は大きく覚醒していくのよ。

どういう経緯で知ったのか分からないけど、それを知ったアンヌマリー様は自ら汚れ役を演じてくださっているのだわ」


「そ、そんな…‥でも、確かに私が知っているアンヌマリー様なら自らを犠牲にしてもおかしくないです」


「そうよ、そうでなければ人知れない場所で泣きながら貴女に謝罪する理由が付かないもの。

リリアーテ、貴女の言った通りね!

アンヌマリー様は本当に素晴らしい方だわ」


自分がアンヌマリー様の立場だったなら果たして同じことが出来ただろうか?


リリアーテの為とは言え、心を鬼にして嫌がらせをすることなど。


しかも、人知れずこのような行いをしているのだ。


リリアーテが世界を救った後には、事情を知らない皆が何らかの処罰を求めることであろう。


最悪、貴族から追放されて修道院送りになるかもしれない。


それが分かっていないアンヌマリー様ではないだろう。


事実、その後も彼女の様子を注意深く観察した結果、その予想が間違いないということが証明されたのであった。

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