悪役令嬢の後日談〜シナリオに則って悪役令嬢を全うしていたのに、遥か昔にヒロインの心を掴んでしまっていました〜
古葉 なな
プロローグ:悪役令嬢のエピローグ
ヒロインは悪役令嬢との婚姻を望む
「私の望み……それはアンヌマリー様の元に嫁ぐことであります」
高々とそう宣言したのは、この世界のヒロインにして聖女であるリリアーテだった。
ここは国王との謁見の広間。
世界を覆い尽くし、破滅へと導く闇を浄化して凱旋した聖女リリアーテ。
彼女の功績を称え、世界を救った褒美を贈ろうと宣言した王。
何でも好きな望みを……それこそ、王の座であろうと構わぬ。
それだけの功績を其方は成し遂げたのだ。
そう語る王に対してリリアーテが望んだ褒美。
それはアンヌマリー……つまりは私の嫁になりたいということであった。
「え、いや、何でなのよ!?」
ようやく状況を理解した私は思わず叫び声を上げた。
急に聖女が私の嫁になるなどと言えば驚くのは当然であるが、それが原因ではない。
本来ならば、私はこの場で断罪される筋書きだった筈だからである。
リリアーテは聖女の力を見込まれて、平民ながらも貴族の通う学校へと入学する。
そして、その場で世界を救う旅に出る仲間と交流して仲を深めつつ己を鍛え上げていくのだが、平民出という事と、彼女の聖女としての立場を妬んで様々な嫌がらせを行う輩が出てくるのだ……この私なのだが。
そう、私は俗に言う悪役令嬢という立場であり、この世界は乙女ゲーと呼ばれる世界。
そして、例に漏れずに私は前世の記憶を持った異世界転生者であった。
普通であれば断罪ルートを避けるため、なるべくヒロインを刺激しないようにするのが定石であろう。
だが、私はそれを良しとしなかった。
前世で私はリリアーテが一番好きだったし、嫌がらせをするアンヌマリーの事は嫌いであった。
なので、是非とも一番幸せになれると思う王子ルートを突き進み、その為に王子との婚約破棄と断罪のイベントを甘んじて受けよう…‥そう思って心を痛めながらも彼女への嫌がらせを敢行してきたのであった。
だから、リリアーテには嫌われており、周りからの評価も最低である私は予定通りにこの場で断罪。
家からも追い出されて修道院に入るつもりだったのだが……どうしてこうなったというのであろう。
招待されていた貴族達も、リリアーテと共に旅をして少なからず彼女に好意を持っているであろう仲間達も、そしてこの場で彼女と結ばれると思っていた第一王子であるウラヌスも呆けた顔をしている。
ただ1人、キラキラとした表情を浮かべているリリアーテを除いて。
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