死に急ぎのギンジ

マジンミ・ブウ

〜プロローグ〜 

 師匠とともに育った広大な山の真ん中で、俺は腕を組み、険しい表情を浮かべていた。


 魔人を全滅させるために、漫画のような力がどうしても必要だったからだ。

漫画は素晴らしい。俺にとってはまさに聖書バイブルだった。凍りついていた俺の心を再び燃え上がらせてくれる存在だ。

 しかし、魔人の手によってこの世の漫画はすべて焼き尽くされた。残ったのは、灰燼に帰った紙切れと、俺の師匠だけだった。その日から、俺は奴らを滅ぼすと決意した。


 まずは体力をつけるため、毎日10kmひたすら走り続けた。汗が滴り落ちるのも構わず、ただ前へ前へ走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走った。

 その結果、日が落ちるまで走っても疲れない体を手に入れた。だが、それだけでは漫画のような屈強な肉体には程遠い。

 

 次に、俺は自分の倍以上ある大岩を持ち上げる鍛錬に挑んだ。血管がはち切れそうなほど力を込め、大岩に抱きつき、何度も何度も持ち上げた。持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げ、持ち上げた。

 その結果、大岩を抱えたまま四股を踏むという、常人離れした力を身につけた。だが、それでもまだ「戦い」には程遠かった。


 そこで俺は、山に棲む魔獣を狩り始めた。身体中に新たな傷を刻みながら、次々と魔獣を狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩って、狩りまくった。

 そして、山中の魔獣をすべて狩り尽くした。


 だが、魔人は魔獣とは違う。奴らは人間と同等の知能を持ち、武器や能力を駆使してくる。魔獣を倒せたからといって、魔人に勝てるとは限らない。


そう悟った俺は、人間との戦闘経験を得るため、長年鍛錬を積んだこの山に深く一礼をし、静かに街へと下りていった。

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