第6話、集落から見たジェイルの評価
◆◆◆◆◆集落の女性◆◆◆◆◆
今日は新しい荷運びの人が来た。
定着させる荷運び候補だろうその人は、妖精? を伴っていた。
良い関係を築いているらしく、妖精は荷運びの男性にとても親し気で、本人も気性はとても穏やかな人だ。
……この仕事に選ばれるとは思えないぐらいに。
集落に『呪いを発する物』を運ぶ仕事は、それなりに腕が立たなければ出来ない。
この辺りの獣や魔獣は中々に危険で、単純に腕が無ければ道中で死ぬ。
つまり荒事に慣れている必要が有る。
そして荒事に慣れている人間は、往々にして性格も荒っぽい事が多い。
「すみません、予定より遅くなってしまって」
けれど腰が低く、荒事に似合っていない様子は、どう見てもそんな強者には見えない。
おそらく妖精が共に居るからと、二人一組前提で依頼されたのだと思う。
妖精は基本的に生まれつき強い存在。種としての格が違う。その辺の魔獣なら敵じゃない。
「穏やかな荷運びと陽気な妖精の二人組か。覚えやすいわね」
「穏やかねぇ……俺の最初の印象は、油断出来ない怖い相手だったがな」
彼等を見送る際に出た呟きに、同僚がそんな言葉を返して来た。
思わず目を向けて首を傾げる。すると彼は片眉を上げながら、小さく溜め息を吐いて続ける。
「あの男の戦闘は、的確に敵を殺す最善手を、ただ淡々とこなしていた。それが失敗するなど欠片も考えていない様な自然な動きでだ。実際あの動きが出来る奴が何人居るやら」
「そう、なの? そんな怖い人には見えなかったけど……」
「腰の低さは擬態だろう。実力を隠す為か、誤魔化す為のな。むしろ実力に自信が有るからこそ、半端に強い連中と違って力を見せない。見せたら損になると思っている感じだな」
「……それを聞いてると、暗殺者みたいに聞こえるんだけど」
「同じ感想を抱いたよ。だから最初はかなり警戒したしな。姿を見せるのも結構怖かった」
自身の感想とは余りに食い違う同僚の言葉に困惑し、けれど嘘では無いのだろうと思う。
彼が嘘を吐く必要は無いし、何より彼は警備を纏める実力者だ。
その彼が言うなら真実なのだろう。
「でも逆に言えば、敵対しなければ穏やかな、普通に付き合い易い人よね?」
「そうだな。その辺りは俺も同意する。妖精も良い子だったしな」
「ふふっ、そうよね。無邪気で可愛い子だったわね」
「あれも最初は驚いたけどな。突然妖精が出て来て、しかも見た事無い妖精だったし」
本当に不思議な妖精だった。何故か言葉が解るのも……妖精ならそういう事も有るかな。
一口に妖精と言っても、まだまだ良く解らない種族だし。
山奥で潜んでいる妖精も少なくないからね。
あの妖精もその類だったらしく、なら他にも見た目の不思議な妖精は居るかもしれない。
そんな会話を交わした後、私は作業場に戻った。
「さて、一度封をしなおさな————」
そして受け取った荷物の封を開け、一瞬固まってしまう。予想外な出来事に遭遇して。
「……呪われて、ない……まさか荷物を間違えた?」
そうなると彼は、未だ呪われた道具を持っているという事になる。
それは不味い。かなり不味い。
この封はそんなに長くは効かない。帰る途中で封が死ぬ。いや、待って、おかしい。
「これは、間違いなく呪いの封。それに、少し削れてる」
包みは間違いなく呪いを抑える封。そして奥の方の封は幾つか駄目になっている。
つまり間違い無くこの中には、呪われた物が入っていたはず。なのにこれは呪われていない。
「解呪された? いや、有り得ない。出来るはずがない。こんな封ごときで呪いは消えない」
この集落の外で解呪が容易く出来るなら、私達はこんな辺鄙な所に住んでいない。
何よりココに送られて来る時点で、解呪どころか封じておくのも困る物はなず。
じゃあこれは偽物だろうか。中身を抜いて、別の物を入れたのか。
それも無い。そんな事をすれば即座にバレる。
中身を抜く人間なら、そんな馬鹿な事はしない。
やるなら荷運びの人間の消息を絶つだろう。入れ替えるなんてバレる真似は悪手だ。
「————これ、反転している」
恐る恐る短剣を握ると、力を発しているのを感じた。これは間違いなく呪われていた物。
そして解呪され、呪いが反転して強い力を持つ短剣になっている。
まさか彼が解呪した? どうやって。何の為に、そもそも解呪した物を何故そのまま。
「……報告と確認が必要そうね」
今すぐ彼を探しに行かせるのも手だけれど、それだと万が一の場合妖精の存在が危うい。
何より同僚の言葉を信じるなら、彼自身もどんな反撃をして来るか解らない。
彼に敵意や企みが無いなら良いけど、もし追わせる事が目的なら罠の可能性も有る。
下手に追いかけて返り討ちに遭う可能性を考えると、報告して国に任せる方が良いでしょうね。
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