第10

 扉を開けるとそこは、天空に浮く島だった。

「・・・ここが外の世界?」

「マスター。そーみたいねぇ」

「グゥヴヴヴヴヴヴヴ」

 クロキは、何かを威嚇する。

 クロキの目線を辿ると白い翼に、綺麗な金髪の天使ぽい少女が凄いスピードで向かって来ていた。ゴブゾは、太刀を抜き戦闘態勢に入る。

「マスター!あれは、ヤバそうな気配がします」

「・・・敵ぽいな。気を付けろよお前ら。」

「わかったわ。」

 ユキナは、気配を消す。

「皆さん!。私は敵ではありません!剣を収めてください!」

 天使ぽい少女は、焦っている。スピードを落とさないまま扉に顔面から激突した。ずる~とゆっくりと落ちていく。扉に血の後がついていた。・・・うわぁ。痛そう。

 ユキナも「うわぁ。痛そう」と言って姿を現した。太刀を収めて此方に天使ぽい少女に近づくゴブゾ。

「貴方は一体誰ですか?」

 天使ぽい少女は、正座をして怯えた様子でゴブゾを見た。

「わ、私は、天使No.2。神様の命令で貴方たちをお迎えに参りました。」

「・・・俺たちを?。神様が?。」

「はい!・・・ま。魔王だ!」

 俺を見て怯える天使。少し近づいただけで泣き出しそうになる。

 俺は、ゴブゾの後ろに隠れるとホッと胸を撫で下ろす天使。

「あの~悪いんですけど魔王様。これ以上近づかないで貰いますか?」

「マスターに失礼ですよ。殺しますよ。」

「す、すいません。すいません」

 何度も謝罪する天使に殺意を向けるゴブゾは、太刀に手を置く。

「もーいいよ。ゴブゾ。神様の所に案内して貰うぜ!」

「・・・少しでも敵意を向けたらうちが殺すから。」

「まぁまぁ。その時は俺がやるから。」

「ヒィイイ。私は敵ではありませんから!!」

 天使は、怯えた様子で俺たちを神様の元へと連れていく。

 白い綺麗な神殿は、何処か神々しい。肌がピリピリとじんわりと痛い。

「この奥に神様がお待ちですので行きましょう!」

 天使は、無理して元気を出しているように見える。

 天使たちは、神殿に入っていく。

 俺は、呼吸を整えて神殿に足を踏み入れる。

 神殿には、多くの天使たちが忙しそうに働いていた。

 一部の天使たちは、俺たちを見てひそひそ話をしていた。

「・・・敵意はないようだが。なんだろうか。この違和感。天敵を見ているような。」

「それはそうでしょう?。貴方は魔王。私たちは天使。悪と正義。魔王と勇者みたいな関係ですから。・・・からといって、殺さないでください。私たちは貴方たちに勝てませんので。」

 天使は怯えてながらも神様の元へと案内している。だから怯えているのか?何か違う気もする。なんだろうか。


 ☆


 他の扉に比べてかなり大きい扉。他の扉と違いかなり豪勢に作られたその扉。

 ふぅーと緊張したを解くように息を吐きノックして扉を開ける天使。

 その部屋には、大きな地球儀みたいな物が中央に飾られている。その前には、豪華な机があり、そこで事務作業している女性。御光がさして顔を確認出来ない。

「No.2。ありがとう。貴方が魔王。そして、その眷属たちですか。どうぞ、お入りください。」

「では、女神様。私はこれで!失礼しました!」

 天使は猛スピードでこの場から逃げ出す。え?早い。どんだけ嫌だったんだ。

「で?俺たちを呼んだ理由は?」

 殺気を込めて睨むが女神は、動揺も見えず冷静だった。

「・・・それは、私に協力して欲しいですよ。」

 女神は、指パッチンをすると3席の椅子が俺たちの元へとやってくる。その椅子に俺たちは座る。

「・・・。協力?。俺たちに?。怖いんだけど。」

「こ、こわくないよ?」

「はぁー。俺たちに何をして欲しいんだよ。」

「それは。・・・。その。・・・。」

「そんなに言いづらいのか?」

「この世界を救って欲しいのよ。」

「はぁ?そんなの勇者に頼めよ」

「協力してくれたら一つ願いを叶えてあげる。」

「願いをねぇ」

 疑って見ると少し動揺した女神。

「・・・私が叶えられる程度にしてねぇ?」

「もちろん全員の願いを叶えてくれるんだよなぁ?」

「え、えと。そ、そうよ。当たり前じゃない。」

 明らかに考えてなかったなぁ。こいつ。まぁ。言質は、とったし。いいだろ。

「その協力って何をすればいいんだ?」

 パンっと机を叩き立ち上がる女神は、此方に指を指す。

「それはねぇ。・・・この世界の迷宮に封じた邪神【ロキ】の討伐よ!。その討伐は、勇者が止めをさして邪神の魂を抹消するのに協力してほしいのよ!」

 待てよ。元神様の願いを叶えるか。この女神に協力するか。・・・。どちらにせよ。俺の願いは、変わらない。元神様が言っていた遊戯の神とやらは、俺の予測が正しければ邪神だろうし。結果的に殺すことは、変わらない。とりあえず保留するか。この世界を旅して決めるとするか。

「・・・すまんが保留で。」

「え?何で!?」

「はぁ。まだお前を信用無い。・・・それに。こっちに嫌な気配が来ているしそれどころじゃなくなる」

「え?」

 ドーンと爆発音と共に扉が吹き飛んだ。そこには、扉を蹴破っただろうと思われる人が立っていた。そいつに見覚えのある金髪変人野郎だった。

「おい!糞女神!あいつ!来てるんだろ!!会われろ!・・・っているじゃねかよ。久しぶりだなぁ!イレギュラー!と鬼野郎!」

 馴れ馴れしく俺の肩に腕を回す。その腕を振り払い顔面を殴る。

「馴れ馴れしくするなぁ!変人野郎!」

「・・・チッ。・・・殺るか?。イレギュラー?」

 俺は、立ち上がり金髪野郎と睨み合う。


 ☆


「殺る。・・・今度こそ殺す。」

「てめぇごときが俺を殺せるのか?」

「・・・お前こそ。俺を殺せるの?」

 いがみ合い俺たちを止めようとゴブゾは、金髪変人野郎に太刀をむける。

「悪魔・・・私たちもいることを忘れていませんか?」

「あ?忘れるわけねぇだろ?お前も喧嘩に混ざるか?なぁ!?」

「やめなさい!!この神殿よ!!世界システムに悪影響よ!!」

 俺たちは、呆れてたように女神を睨む。

「な、何よ。まぁー。座りなさい。・・・憤怒サタン

「チッ。・・・わかったよ」

 不満そうに椅子に座り足を組む。大きなため息をして真剣な顔をする女神。

「貴方達も座って。・・・話の続きをしましょう?」

 俺たちも座る。

「・・・さっきも言ったけどよ。協力の件は、保留する。お前も信用してないのも一つだがあいつは、お前の仲間だろ?」

 女神は、そっぽを向き明らかに仲間だということがわかってしまった。・・・恐らくだが金髪野郎は、俺たちの監視として迷宮に潜っていたんだろ。そして、暴走して俺に喧嘩を仕掛けたのだろ。こいつも大変だなぁ。

「まぁー一様。・・・というか憤怒サタン。自己紹介しなさいよ」

「あ?面倒臭い。・・・チッ。わかったよ。憤怒の魔王。サンタ・サタンだ。種族は、悪魔だ。よろしくな。イレギュラー。」

「・・・俺の名は、レギュラーじゃない。怠惰の魔王。レブナント・ベルフェゴールだ。サンタ。よろしくはしたくないがよろしく。」

「あ?」

憤怒サタン。いちいち喧嘩を売らないで。話が出来ないでしょ。それで保留ってどういうことですか?」

「言ったりだろ。お前たちを信用してない。それに俺は、俺のために迷宮に潜る理由があるんだよ。」

「・・・信用無いか。まぁそうよねぇ会ったばっかだしねぇ。」

「まぁ。俺の邪魔をしなければ協力はするし邪魔をすれば殺す。」

「・・・わかったわ。でもこれだけは協力して、勇者を探して育てて」

「見つけたらなぁ。・・・この姿じゃ無理じゃねえ?」

「そうねぇ。スキル【不死】の権能に【人化】を追加したわ。」

「・・・ありがとう。でさぁ。どうやって下に降りるの?」

「え?飛び降りて?」

 何言ってるんだ。こいつ。頭のネジ外れてるのか?。俺は、飛べるが。こいつらは、飛べんぞ。

「そうねぇ。天使たちは、使って下界に下ろしてあげるわ!・・・」

 後光で表情は、見てないが多分悪い顔をしている。

 そして、俺たちは神殿と浮島をあとにした。



 俺たちは、何処かの草原に降ろされた。

 天使たちは、猛スピードで天界へと戻っていく。

 二つの月と星々に飾られる夜空は、綺麗だった。二つの月をみてさらに確信する。ここは異世界なんだと。

「人化してみるか。それと幽体離脱するか」

 青白い炎が俺を包む。

 炎が消えると白い肌、白髪、紫色の瞳、細マッチョ。男性で身長は170cmぐらいだろ。顔はモブ顔だった。イケメンじゃなかった。服装は、魔導師みたいな黒いローブ。これで剣を使うのか。この見た目なら杖が似合いそうだなぁ。相変わらずクロキは、頭の上にいるのか。まぁー戻るか。

「へーマスターの人化ってこんな感じなんだねぇ」

 ニヤニヤしたユキナは俺の顔を覗いていた。

「マスター。以外と細いですねぇ。私のイメージでは、ムキムキだと思ってました」

 ゴブゾは、品定めをするように見ている。

「二人とも。とりあえず。勇者と迷宮探すぞ!」

「了解です。マスター。」

「わかったわ。行きましょう。」

 

 俺、橘悠は過労死してスケルトンになりました。

 そして、迷宮でゴブゾ、ユキナ、クロキと出会い。怠惰の魔王となって迷宮を攻略し、女神と憤怒の魔王にも出会う。

 俺の願いは死ぬことだ。そのために俺の中にいる元神様の願い「親友を殺して救い出してほしい」を叶えて俺の願いを叶えて貰うか。それとも女神に協力して邪神討伐の手伝いをするか。

 この世界を旅をしてどっちにつくか。決めないとなぁ。まぁ、ボチボチやっていくか。まだ見ぬ勇者と元神様の親友がいる迷宮を探しの旅が今、始まる。

 俺は、まだ知らない。俺という存在がこの世界の運命を握っていることを。 


 ☆


 レブナントの心の奥底でレブナントの目を通しては、スキル【魂狩り】の意識体は、虚ろな目で彼の行動を監視している。

「期待してるよ。ボクの勇者。キミがあの子を救うのか。それとも姉さんに協力してあの子の魂を抹消するのか。キミの行動で世界の救済か。それとも世界の崩壊されるのか。ボクはきっとそれでも・・・願うだろ『世界の終わりを』」

 意識体は、彼の行動を監視し続けながら闇に飲み込まれそうになっている。

 

 完

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スケルトンになりました 白野 シャチ @sirono96

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