スケルトンになりました

白野 シャチ

第1話

 橘祐。三十歳。彼女いない歴=年齢。社畜で趣味もなく嫌な仕事のために生きているものだ。

 俺は、いつものように朝4時から仕事していた。

 ふと時計を見ると深夜2時すぎを指していた。

「帰りて。・・・まだ、終われんな。タバコ吸うか。」

 タバコ休憩に入ろうと席を立ったその瞬間。体に力が入らず後頭部から倒れ、そのまま気を失った。


「仕事終わってないんだ。まだ死ねない!」と起き上がる。

 俺は、見覚えもない場所にいたのだ。

 その場所は、半径十メートルぐらいのドーム型に地中をくり貫いたような部屋。その部屋を瞬時に洞窟内と理解した。ただ一点が気になることがある。日の光を通す窓も無ければ照明ような物もないのに少し眩しいぐらい明るい。その一点を覗けばどうみても洞窟内としか思えない。

 俺は、思考が停止し、その場に立ちすくむ。

 ふと自分の手をみる、骨しかない。うん、これは夢だ。夢に違いない。

 喋るとするが声出ない。不思議に思い首を触る。つるつるとした骨の感触。理解が出来ずそのまま身体中を触る。骨しかない。科学室にあるような人骨の模型ような骸骨になっているようだ。

 不思議なことに身体は、思ったように動かせる。

「あー俺、ゲームとかに出てくるスケルトンになったのか。やけに現実感はすごい夢だなぁ。うん。夢だ。夢だよね?」

 疑問に思いつつもここに留まっても仕方ないと思い部屋の奥に見える通路へと歩く。

 通路を歩き続け、体感二時間ぐらいたった。道は真っ直ぐでなく曲がりくねり、更に複数に道がわかれていた。その道は人工的に感じるが人の手で作られたとは、思えなかった。

 そして、起きた場所に戻ってしまった。何度か起きた場所に戻っては、行ってない場所を探索する。

 やっと起きた場所以外の部屋らしき場所にたどり着いた。

 その部屋の中央には、一メートルぐらい大きさで青紫色の半透明のゼリー状の動く物体がいた。

 俺は、その物体をスライムと呼称することにした。

 俺は、スライムに興味を引かれて右手の人差し指で触るとぷにゅっという柔らかく弾力のある感触。

 すると次の瞬間、人差し指の第一関節までスライムに吸い込まれ溶けた。俺は、慌てて指を離し二メートルぐらい後退りする。

 ぷよんぷよんとこちらに歩いてくるスライムを可愛いと思ったが一瞬で指を溶かすことができるスライムは俺の事を餌として見ていると直感しそこら辺にあった石ころを投げる。

 しかし、石ころはスライムに直撃するも体内に吸い込まれ一秒も掛からずに溶けて消えてしまった。

 一定の距離を保ちつつ、石ころを投げ続け数百発目で何かに当たる音がしたと思ったらスライムは動かなくなってしまった。

 数秒後。白いふわふわした雲みたいな饅頭ぐらいの大きさの球体が突如してスライムの上に現れた。俺はその球体を無性に食べたいと思い手を伸ばす。

 触れた感触はないが確かに手に持っていると感じる。

 食欲には、抗えずその球体を一口食べる。食感も、味もないにとにかく旨い。何とも言えない充実感で満ちる。


『経験値が一定値を越えました。名も無きスケルトンがLv .0からLv .1になりました。』


 無機質な女性らしき声が頭の中に響く。

 「あっ。俺、さっきまでLv .0だったのね。」

 レベルあげるためにスライムを数十体倒してもレベルアップは、しなかった。

 そして体感で1日過ぎたと思うが不思議なことに身体は疲れては、いない。しかし、心をかなり疲労している。

 これがゲームなら自分のステータスやマップが確認出来れば楽だと思うのだがそんな機能はないらしい。

 何度か心の中で「メニューオープン」とか「ステータスオープン」とか「鑑定」とかを心の中で叫んでみたが何の反応もない。

 しばらく。スライム狩りに勤しんでいた。

 スライムを倒し雲みたいな球体を食べる。 

『スキル【魂狩り】の熟練度が一定値を越え、Lv .1からLv .2になりました。』

 頭に響く声は、意味の分からないことを言ってきた。ソウルイーター。なにそれと疑問が出来ても頼れる人がいない。 

『スキル【魂狩り】がLv .2に上がったことで≪鑑定≫が権能に追加されました。』

 鑑定を使えば自分のことも分かるかもしれない。やってみようと思うがどう使うだろか。


 種族【スケルトン】

 名前【 】

 Lv .1

 スキル

 【魂狩りLv .2】

 ・鑑定

 【不死】

 ・強制復活

『魂狩りは死亡した魂を狩り捕ることができるスキルです。不死は何があっても死ぬことが出来ないスキルです。』


 目の前に俺のことが書かれた白い半透明の紙が空中に現れた。どうやら出来たらしい。

 俺はこの紙をステータスボードと呼ぶことした。

 スキルは使いたいと強く思えばできるみたいだ。しかもスキルの詳細も分かるみたい。


 魂狩りは文字通り魂を狩ることができるみたいだ。ふわふわした曇りみたいな球体を仮に魂だとすると俺、魂を喰ってることになる。

 「不死か。死ねないのかぁ。チートスキルだなぁ。ん?何があっても死ねないの!。呪いかよ!」

 叫びたいが声帯がないから叫べない。

 そこへスライムがやってきた。

 「よし鑑定だ。」


 種族【スライム】

 Lv .2


 「え、終わり?。」

 スライムを倒し魂を喰らう。

 探索するもお宝やスライム以外のモンスター、トラップもない。仕方ないのでスライムを狩りレベル上げに精をだすがレベルは上がらなかった。


 これまでとは、違う広い空間に出た。そこには、地下に行くための階段があった。その階段を守るようにこれまでのスライムの数十倍の大きさのあるスライムがいた。巨大スライムと呼ぶとしよう。

「デカいな。武器に石ころしか無いんだけど。やるしかないか。」

 巨大スライムに近づいた瞬間。巨大スライムから触手のような物が俺、目掛け飛んでくる。

 焦って避けるも追尾され強烈な一撃を喰らう。痛み共に左側あばら骨の数本が折れその場に落ちる。

 「くそ。あの触手。追尾式かよ。逃げても当てられるなら!石ころの乱発で対抗じゃい!」

 スライムの懐目掛け走りながら石ころ拾い投げる。

 四方八方からの触手猛攻。避ける隙すら許して貰えず。俺が乱発する石ころでは、大したダメージにもなっていないようだ。

 「石ころを拾いながら攻撃では、効率が悪すぎる。ちゃんとした武器が欲しい。」

 巨大スライムの触手による攻撃で俺の身体の様々な部位を折られ立つことすらままならずスライムの目の前で力尽きる。

 ゆっくりとスライムが覆い被さり俺は、溶かされ意識が遠退く。

 『スキル【不死】が発動。不死の権能、【強制復活】が発動。肉体の再構築を開始。』

 俺の身体が強烈な青白い光を放つ。巨大スライムは俺から距離をとる。

 『肉体の再構築が完了。』

 ボロボロだった俺の身体は、完全な状態に戻っていた。

 「・・・逃げるか」

 色々と疑問があるが巨大スライムから逃げた。

 巨大スライムは階段を守っているためかその部屋から出てこない。

 俺の逃亡は成功した。態勢を整え再度挑む事とした。そのためにこの階層を徹底に探索する。

 うざいぐらいいたスライムが唯一いない部屋で錆びた騎士の装備をした白骨死体があった。

 気が引けるが小盾と直剣を拝借することした。

 なぜ鎧を着ないかって理由は単純だ。肉がなくて着られんかった。

 「試し切りでもやるか。」

 普通サイズのスライムに試した結果。拝借した剣の切れ味は、悪くなかった。小盾も問題はない。

 「これであのクソデカスライムと闘える。」 

 リベンジ戦。

 巨大スライムに闘いを挑む。巨大スライムは相変わらずデカイ。巨大スライムがいるフロアに足を踏み入れた瞬間に左脇腹を狙い触手攻撃を仕掛けてくる。その攻撃を小盾で弾く。

 「どーだみたか!」

 巨大スライムは、四方八方から触手攻撃を乱発する。剣や小盾で攻撃を防ぐことは、出来るが攻撃に移せない。

 「やばいな。攻撃手段がねぇー」

 数十本の触手攻撃でその場から一歩も前に進めない。触手を切り落としてもすぐに回復する。

 「こりゃー詰んだな」

 巨大スライムの不意打ちの攻撃を背後から受けてしまい背骨が砕け散り上半身と下半身がわかれた。

 「まじか」

 『【不死】が発動。不死の権能、【強制復活】が発動。肉体の再構築を開始。・・・肉体の再構築が完了。』

 「巨大スライムを鑑定!」

 

 種族【スライム・ロード】

 Lv .?

 

 「はぁ?!ロード?レベル不明。」

 巨大スライムから再び逃亡する。

 巨大スライムに勝つためには、レベル上げが必須か。

 1万体以上のスライムを倒してレベルが上がった。

 俺のステイタスは次のようになった。


 種族【スケルトン】

 名前【 】

 Lv .2

 スキル

 【魂狩りLv . 2 】

 ・鑑定

 【不死】

 ・強制復活・魔力感知(NEW)・熱源感知(NEW)

 【剣士】(NEW)

 ・剣術(NEW)


 魔力感知と熱源感知を手に入れた瞬間、色々と頭に凄まじい勢いで周辺の情報が流れ込んで頭が割れるのでは、ないかと思うぐらい痛かった。時間が経つにつれて痛みを和らいでいった。しかし、あの巨大スライムに挑むには、まだ、早い。

 スライムを倒す日々が続いた。

 多くのスライムを倒してわかったことがある。スライムには、核みたいなものがあり、それを壊すとスライムは、即死する。しかし、あの巨大スライムは、核までゼリー状の物質は、分厚く剣が届かない。

 「どーすっかな」

 巨大スライム戦のこと考えながら目についたスライムをひたすら倒し回っていたらいつの間にかレベル9になっていた。


 種族【スケルトン】

 名前【 】

 Lv .9(MAX)

 スキル

 【魂狩りLv .2 】

 ・鑑定

 【不死】

 ・強制復活・魔力感知・熱源感知

 【剣士】

 ・剣術


 「え?レベルMAX?はや!・・・・あいつに再戦じゃい!」 

 再度リベンジ戦。

 巨大スライムのいるフロアに足を踏み入れた瞬間に触手攻撃を仕掛けてくる。その攻撃を小盾で防ぐ。

 魔力感知のお蔭で相手の攻撃が分かるが数が多い。1つ1つ対処しているがじり貧だ。

 巨大スライムの同時全方位攻撃。  

 死角のない攻撃に思えるが一ヶ所だけ隙間が空いていた。

 その隙間は、罠の可能性が高いがそこに飛び込むしか勝ち目がない。

 やはり、罠だった。全方位攻撃を抜けた先には、前方から数十本の触手束が俺目掛けて突っ込んでくる。

 その攻撃を盾で防ぐ。ミシミシと左腕に腕がなく。踏ん張りが効かず吹っ飛ばれてしまう。

 巨大スライムは後方から触手攻撃で追い討ちを仕掛ける。 俺は、無理やり百八十度、身体を回転させ触手攻撃を剣で反らす。反動で地面に着地出来た。だが盾で防いだ左腕に罅が入っていた。

 かなり痛いが動かせない程ではないだが続き盾で防いだら間違いなく使えなくなるだろ。

 「正直、キツいな。まぁーでも、前よりは戦えてる。」

 巨大スライムの猛攻撃が止まったが隙を伺っているようにも思える。

 「そーうまくは行かないだろがカウンター狙いで懐に入って少しでも肉を削ぐか!」

 そう思った瞬間巨大スライムが動く。触手を束ねて巨大なハンマーを形成すると本体は大分縮んでいた。それを好機として巨大スライムの懐に潜り込んだ瞬間、俺のもといた場所に振り下ろした。ドーンという轟音と共に衝撃波が来た。あれに当たっていたら即死だっただろう。

 巨大なハンマーは、徐々にスライム本体に戻っていく。俺は慌てて巨大ハンマーと本体繋がりが弱い継ぎ目の所を叩き切る。

 切り落ちたハンマーは地面につくなり液状化した。本体はパニックになり、ゴロゴロと周りを転がっている。

 そして本体は、通常の個体と同じぐらいの大きさになっている。

「これは好機。」

 スライムの動きを見定め、剣を核に向かって突き刺す。

 スライムは液状化してバランスボール並みの大きさの魂が出てきた。

 「うまそう。では、いただきまーす」

 その魂を一口食い千切る。前世でも味わったこともない旨味が口の中で溢れてくる。心が満たされていくのがわかる。もっと喰いたいと本能に訴えてくる。そんな食欲を我慢出来ない。俺は自我を失い、魂をむさぼる。

『進化条件が達成されたため、進化を開始』

 魂を喰い終わると身体に変化が起こる。何とも言えない激痛が全身を電流のように駆け巡る。

 体感で五時間経過してやっと痛みが治まった。

『種族リッチに進化、成功しました。リッチに進化したため、レベルがリセットされ、さらにスキル【不死】に眷属召喚、眷属作成、覇気が権能に追加されました。』 

『スキルの最適化を行いました。そのため、スキル【剣士】は、スキル【魂狩り】に併合され、スキル【魂狩り】のレベルが上がり、権能に剣術が追加されました。』

 するとステータスボードが現れた。

 

 種族【リッチ】

 名前【 】

 Lv .1

 スキル

 【魂狩りLv .3】

 ・鑑定・剣術

 【不死】

 ・強制復活・魔力感知・熱源感知・眷属召喚(NEW)・眷属作成(NEW)・覇気(NEW)


「え?また、レベル上げ」

 ようやく、次の階層に行けるようになったがこのままのレベルでは、不安な為、レベル上げすることにした。


 種族【リッチ】

 名前【 】

 Lv .9

 スキル

 【魂狩りLv .3】

 ・鑑定・剣術

 【不死】

 ・強制復活・魔力感知・熱源感知・眷属召喚・眷属作成・覇気

 

「結局、追加された権能の使い方が分からなかったけどとりあえず元のレベルまで上げから次いくか!。しかし、この夢長いな。いつ終わるのだろか」

 こうして、俺は次の階層へと向かうため、この階層を後にした。階段を下りていくときに何かが壊れる音がして振り替えると何の異変もなかった。

 この時の俺は気付かなかった。元いた階層が無かったことに。


 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る