第2話 激闘の果てに
「───うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
《戦人の足音》。それは、俺が編み出した必勝の技だ。
効果は単純。力強く踏み込み、闘気を燃やして自らの素早さと攻撃力を大体2割ほど増加させるというものだ。
そして重要なのは、こいつの効果が"重複する"という点だ。
何十回にも渡り重ねがけをすることで、俺は無敵の素早さと攻撃力を手に入れることができる───つまり、ずっと俺のターンをすることができるのだが、如何せん時間がかかる。
「この邪龍ヤバイヤーツがそんなことさせる時間を与える訳が無いでしょうがァ!死に晒──」
なので、
「《タルダス・テンパス》!」
時の賢者の魔法で邪龍の時を止める。
その隙に───
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「それ毎回叫ばないといけないんですか?」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「あっこれ聞いてないな」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
重ねがけをするという訳だ。そして、
「──せェェェ!!」
と、時の賢者の魔法が切れたところで──
「《タルダス・テンパス》!」
邪龍が止まっている隙に魔力を回復した時の賢者がもう一度同じ魔法を行使する。
そして──
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
さらに重ねがけをするのだ。
♢
「───ェ───」
「《タルダス・テンパス》」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「───ェ───」
「《タルダス・テンパス》」
「うおおおおッ!!《戦人の足音》ッ!!」
「───ェ───」
「《タルダス・テンパス》」
「うおおおおッ!!力が漲るぜッ!!」
「あっ、やっと終わりました?」
「ああッ!邪龍ワルイヤーツ!お前に天誅を下す時だ!喰らえ!」
そして、俺は邪龍に向かって駆け、必殺技 《居合切り》を放つ!
ズッバアアアアァァァァン!!!
「グォオオオオオオオオオオオアアオオオオアアアアアアアァァァアアアアアァァアアァアッッ!!!!」
邪龍の断末魔が響く。悪は滅びたのだ。
「グゥッ……こ、この俺が………敗れる………だと…………!?あ、有り得ん!矮小な人間ごときに、この俺が────!」
ギリ滅んでなかった。
「───はっ!?」
ので、俺は邪龍に向かい駆け出していた。
「グゥ……ッ!舐めるなァァァァァアァアア!!!」
「《タルダス・テンパス》」
邪龍は炎の息吹を放つが、時の賢者に呆気なく止められてしまった。
「なッ…止まッ───!きッ、貴様ァァァァア!!」
そうしている内に俺はさらに距離を詰める。
「クッ………クソクソクソクソ───ッ!!
この────ッ!」
そして俺の剣が届き────
「人間風情がァァァァァァァ!!!!!」
────邪龍を貫いた!!
どちらが勝ってもおかしくない、互角の戦いだったが───今度こそ悪は滅びたのだ!!!
♢
俺たち勇者一行は王城に戻ってきた。
「おお、勇者よ!よくぞ邪龍を倒してまいった!貴様の望む通りの報酬をやろう!」
「じゃあ姫と結婚させてください」
「それは無理じゃ。それ以外にしてくれ。」
「は?」
「このことを見越していた姫からの伝言を伝えるぞ。『キモイから無理』だそうじゃ。」
「あと『ストーキングをやめろ』とか『下着を盗むな』とか来てるぞ。」
「お前王族相手によくそんなことができたものじゃな。」
「さすが勇者じゃ。勇気だけは1人前じゃの。」
「でもダメです。死刑。」
「やっべ逃げろ」
ゆうしゃは にげだした!
「衛兵ーーーッ!!大逆人が逃げたぞーーーーッ!ひっ捕らえよォーーーーッ!!!」
「「「「「「「うおォーッ!」」」」」」」
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