唯VS友美 あたしのターン!

 デュエル・ザ・バース、通称デュエバはトレーディングカードゲームの元祖に倣い、毎ターン増えていくプレイポイント内でカードを使い、相手の体力をゼロにした方が勝つというものだった。

「唯ちゃんは初めてだからね。ウォーリアデッキとかおススメだよ」

 そう言われて渡されたのは、屈強な戦士のカードが数多く含まれたデッキだった。サーバントと呼ばれるカードをテンポよく出していき、展開力で勝つデッキ、だそうだ。サーバントには攻撃力と体力が設定されており、このカードで攻撃していくのがゲームの基本のようである。


 手札を5枚引き、エマージェンシーカードと呼ばれるカードを場に3枚セットする。そして、私からバトル開始だ。

「えっと、コスト1のカードを出せるのよね。じゃあ、見習い戦士キットを使うわ」

 気弱そうな少年戦士のカードを場に出す。攻撃力と体力は共に100。ゲーム中の最低値のようである。

「それで、先行は攻撃できないのよね」

「そう。ターン終了だね。じゃあ、あたしのターン!」

「何よ、それ」

「遊戯とか勝舞がよくやってるやつじゃん」

「だから知らないっての」

「このターンはパスでいいや」

「あ、そう。えっと、砲撃手カノンを召喚」

 次に場に出したのは、巨大な大砲を抱えた女性戦士のカードだ。コスト2だからか、先ほどの戦士よりも能力が100ポイントずつ上だ。


「そして、キットでプレイヤーを攻撃」

 キットのカードを横向きにし、攻撃宣言をする。友美のライフが減らされ、1900となる。

「まだまだ、ゲームはこれからだよ。あたしのターン!」

「それ、毎回言うの?」

「唯ちゃんもやってみなよ。面白いから」

「結構よ」

「つれないなー。じゃあ、アーチャー・キャットを召喚して能力発動。体力100のサーバントを破壊するから、キッドを墓地送りにする」

 弓矢を装備した猫のサーバントが弓を飛ばし、キットを狙い撃ちにする。場に出ただけで効果を発揮するカードもあるのね。なんか、私の手札には特に効果を持たないカードが多いのは気のせいかしら。


 私はコスト3のメタル・ガーディアンをプレイ。そして、カノンでプレイヤーを攻撃してライフを1700に削る。

「キャットを放置なんて、アグロなプレイするね」

「さっさとライフを削ればいいんでしょ」

「その割にはデコイで守りを固めちゃって」

 デコイ能力を持つサーバントが場に出ている際、相手は攻撃可能ならばこのサーバントを攻撃しなくてはならない。深い意味はなく、出せるカードがこれしか無かったのだ。


「なら、あたしのターンだね。狼の群れ長を召喚」

 使用したカードは枠ブチが他のカードに比べて豪華な代物だった。私が注視しているのに気付いたのか、「ふふふ、レアカードだよ」と勝手に注釈を入れてきた。

「群れ長の効果発動。山札からコスト2以下のサーバントを無償召喚する。あたしはムササビ伝令兵を召喚。効果でカードを1枚引く」

 狼とムササビのカードを加わったことで、相手の場のカードは3枚だ。でも、ライフは私の方が上。おまけに、攻撃せずにターンを渡された。恐れるに足りないわ。


「コスト4の大斧使いの巨漢を召喚。カノンとガーディアンでプレイヤーを攻撃」

 既に相手のライフは1400。巨漢の攻撃力は400だから、次のターンには半分にまで削ることができる。本当にくだらないゲームだったわね。この調子だと、一方的に勝ってしまうじゃない。


 しかし、劣勢に立たされているのに、友美に焦りはない。むしろ、したり顔をしている。

「初めてのバトルにしてはよくやるじゃん。でも、デュエバの面白さはここからだよ。手札から2枚目の伝令兵を召喚。そして、ジャガー・パラディンにランクアップ」

 そう言って、伝令兵のカードの上に、甲冑を纏ったジャガーのカードを重ねた。一見したところ他のカードと大差はない。違うところは、左上のランクという数字が1ではなく2というところだろうか。


「これぞデュエバの醍醐味、ランクアップ。サーバントにはビーストとかウォーリアみたいな種族があって、同じ種族同士のカードならランクアップできるんだ。今のはランク1ビーストの伝令兵をランク2のパラディンにしたってところだね。まあ、ポ〇カやデュ〇マの進化と似たようなシステムだよ」

 よく分からないけど、とりあえず、状況を打開されそうなカードを出されたことは分かった。そして、その予想は間違いではなかった。


「ジャガー・パラディンの効果発動。アーチャー・キャットの攻撃力を200ポイント上昇させる。ランク2のサーバントは場に出たターンに攻撃できる。ジャガー・パラディンでメタル・ガーディアンを攻撃」

 ジャガー・パラディンの攻撃力は500。体力400のガーディアンは破壊されてしまう。

「続いて、攻撃力400になったキャットで巨漢を攻撃。巨漢の攻撃力も400だから、体力200のキャットは相討ちだね」

 バトルする際、相手サーバントの攻撃力がこちらの体力を上回っていた場合、こちらのサーバントも破壊されてしまう。ジャガーで巨漢を攻撃してきてくれたら相討ちできたものの、体力の高いサーバントを残されてしまった。この子、アホそうに見えて、意外と狡猾なことをする。


「まだあたしのターンは終わってないからね。群れ長でカノンを攻撃して相討ち。そして、伝令兵でプレイヤーに攻撃!」

 私のライフは1900に削られる。まだ余裕だけど、相手の場には強力なサーバントであるジャガー・パラディンが健在。更には伝令兵のおまけまでいる。こちらの場はこのターンで壊滅させられてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る