第5話 カレーライスの日【1月22日】

僕は、少年時代、辛いものがあまり好きではなかった。でも、特に兄弟がカレーが大好きでたくさん食べていて、ずっと不思議に思っていた。僕はそんなに食べることもないし、好きになることなんて絶対にないと思っていた。何であんなに辛いカレーがいいのか分からなかった。


あの頃の僕は経験が少なかった。気合いで乗り切ったり、悔しいと思ったり、そんな奥の深い思いをしたことがなかった。


ある日、激辛好きの友達と出会った。その友達は、料理することが好きで、僕はその友達の料理が好きだった。唐辛子を大量に入れなければ。


友達は、いつもこんな口癖を言う。


「料理はスピードが命なんだよ。」


僕は、料理なんてやったことがなかったから、よく分からなかった。なんとなく、ゆっくり作った方がいいんじゃないのか?とまで思っていた。それに、唐辛子を大量に入れたら美味しいとか分かるのだろうか。


一人暮らしをするようになり、料理をするようになった。その時に初めて友達が言っていたことが分かった。確かに、テキパキ作った料理の方が美味しい。辛党なのに、舌はしっかりしてたんだな。


そんなある日、僕は自分の力では、どうしようもないことを、他の人に責められるという、悔しい思いをした。とても、悔しくて、悔しくて、でも、誰のせいでもないから、誰かに伝えることはなかった。でも、その友達は僕の様子を見て分かったのだろう。何も聞かずにある場所に連れて行ってくれた。それは、カレー屋さん。


そんな時に出会ったのが、辛口のカレー。

悔しいという気持ちさえ、かき消すほどのカレーの刺激。最初は、辛いを通り越して、衝撃しか感じなかった。でも、諦めずに食べ進めて行くうちに、悔しい気持ちが忘れていき、辛いという味覚だけを感じることが出来た。それに、カレーは、色んな辛さがあり、また食べたいとも思っていた。


次の日も、またあの辛口の世界に浸りたいと思うようになり、もう一度食べてみた。

今度は、初めて食べた時とは全く違う世界が広がっていた。辛さに抵抗がなくなっていたのだ。それにより、扉の向こう側が見えるようになった。単に辛いという味覚だけでなく、ほのかに甘みがあり、カレー独特の香りを感じるようになり、カレーを食べるというより、カレーを感じるようになった。


そんな辛口カレーをパクパク食べている僕に友達は驚きを隠せていなかった。


友達も、僕が覚醒したからか、たくさん激辛料理に一緒に挑戦していった。麻婆豆腐、担々麺、キムチ鍋、エビチリ、キムチチゲなどなど。挙げてもきりがない。


友達に誘われたあの日から、落ち込んだ時には、必ずカレーを食べるようになった。


ただの辛い料理ではなくなっていた。

僕を本気にさせる料理だ。

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