第4話

吸血メイドと奴隷姫




 久しぶりにぐっすりと寝れた感覚。

 幸せな時間から醒めたくなくて、何も考えずにぼーっとし続ける。いつもよりあったかい。

 少しだけ目を開けるとと、お嬢様の顔が目の前にあった。

 …???

 なぜだろう…?

 寝ぼけて、手を伸ばす。

 すべすべしていて心地いい。懐かしい感触がする。

 それは私の心を満たしていくようで…、私は我を忘れて主人の頬を撫で続ける。


 ふにふにふに


 しばらく続けていると、目を開けた彼女と目が合う。宝石のようで綺麗な目だなぁ、なんて思っていると。直後、膝を蹴飛ばされた。

 



 何度も失礼を謝り、もういいから、と許されたと思っていいのか分からないトーンで返される。だが、もう私にそれ以上できることなどなく、自室に逃げる帰るより他にない。彼女にじっと見られながら、ベットの横を通り抜け、扉に手を伸ばす。その時だった。


「ちょっと!?」と叫び声が聞こえ、後ろから思い切り引っ張られる。

 服が大きくはだけて後ろに引き戻されると同時に、ベットから身を乗り出して私を止めたお嬢様が「ひゃっ!」と叫びながら痛そうな音を立てて床に落ちる。後ろにバランスを崩した私は、なんとかお嬢様を避けようと試みるが、どうにもならず、彼女に覆い被さるように倒れこんでしまう。

「うっ!」っと、下から悲痛な声が耳に届いた。


 急いでどいて、お嬢様を起こし、謝罪と怪我の確認をする。

 ベットに座った彼女が、いった…、と肘とお腹の辺りをさすっていて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。涙を堪えていると、彼女から、はあ、とため息が聞こえ、後ろを向かされる。直後にもう一度引っ張られ、尻餅をついた。


 耳の近くで、うっ、とこらえる声が漏れる。私は瞬時に立ちあがろうとするが、彼女にがっちりとホールドされて立ち上がることができない。どうしたらいいか分からず混乱している私に、後ろからは冷静でひどく呆れたような声がした。


「あなた、その格好のまま出ていくつもり?」


 そう言われて自分の姿を確認。格好は昨日の指示のまま。

 いや、そのまま寝てしまった事と今ので服は大きくはだけ、髪もだいぶ乱れていた。

 誰かに見つかれば、なにかを勘違いされてもおかしく無いような格好だった。

 急に恥ずかしさが込み上げてくる。


 普通の家なら問題はないかもしれないが、この家では使用人が何人かいるのに加え、この時間はみんな忙しく動き回っている。

 廊下に出れば、自分の部屋までに誰かとすれ違う可能性は高い。


「すみません…。」


 今日何度目かわからない謝罪を口にし、自分の緩みきった行動の数々を反省していると、腕が緩み、お嬢様の手が私の制服を掴む。

 下から一つづつ、制服のボタンを止められていく。申し訳なくて俯きながら、されるがままになる。時々体に触れる手がくすぐったい。


 彼女のなすがままに格好を整えてもらい、お礼の後にもう一度深く謝罪。

 その直後にため息をつかれ、私は部屋から放り出された。




 自分の部屋に戻った私は布団に潜ると、いろいろな意味で、朝から悶えずにはいられなかった。

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