第4話地上での生活


「くぅ~!疲れた~!にしてももう夕方か、ダンジョンは時間がたつのが早いな。」


「目黒ダンジョン」からでてジジの召喚を解除した彰悟が伸びをしていると、


「無事に出てきたか。」

「え?あっ。」


 急に後ろから話し掛けられたので振り向くと朝に入り口にいた鎧を着た剣士がいた。


「はい!上手くいけました!」

「なら良かったよ。」


 彰悟と鎧を着た剣士が話しているとダンジョン脇にある詰所のような場所から朝もいた軽装の女性とローブを着た男性が出てきた。


「ほら、大丈夫だったじゃん。優也ゆうやは心配しすぎだよ。」

「いやいや、新人といえど開拓者仲間なことは変わりません。開拓者は助け合いですよあやさん。」


 そう言いながら彰悟に近付いて来た二人は自己紹介を始めた。


「またあったわね。私は神宮寺綾じんぐうじあや。よろしく。」

「初めまして。僕は石井一真いしいかずまです。」


 二人の自己紹介を聞いていた剣士も慌てながら


「ああ!悪い!俺は柴田優也しばたゆうやだ。よろしくな!」

「あきれた。自己紹介してなかったの。」

「うっかりしてたよ。」


 自分より圧倒的に強くダンジョンの監視をする様な開拓者に自己紹介をしてもらい緊張しながら彰悟も自己紹介をした。


「あ、あの!田中彰悟です!朝はわざわざ注意して頂きありがとうございます!」

「いや昔の自分を見てるみたいで気になってな。」

「昔の自分ですか?」

「優也は昔一人でダンジョンに潜って死にかけた事があるのよ。」

「そうなんですか?」

「あぁ。その時に今のクランの団長に救われたんだ。」

「クラン!?クランに入ってるんですか!」


 彰悟は話し掛けてきた優也達が優れた開拓者であるとは思っていたが、開拓事務所から半独立した組織である「クラン」に所属する程だとは思っていなかった為、思わず驚きの声をあげた。


「まぁまだ新米なんだけどね。」

「いやいや、だとしても凄いですって!だってクランと言えばどこのクランでも国を代表するような開拓者が代表じゃないですか!実際入るのだって凄い大変ですし開拓事務所だってクランには強く出れないって聞いてますよ!」

「はっはっはっ。事務所とはそんなに仲が悪いわけじゃないよ。」

「そうなんですね。って!一体どこのクランなんですか?」

「知ってるかな?「日ノ本の集い」って言うクランなんだけど。」

「知ってるも何も日本一のクランじゃないですか!」

「そう褒めてくれると嬉しいね。」


 その後も彰悟がする質問を優也が答えていると綾と一真が


「そろそろ戻るわよ。」

「そうだね。仕事が疎かになるのはいただけないからね。」


 と優也に言い、彰悟も迷惑をかけるのは良くないと思い三人と別れると開拓事務所へ向かった。


「初めての換金か、いくらになるんだろう?」


 事務所に入った彰悟は案内にしたがってまず「素材提出所」へ行き、中にいる人に素材を見てもらう事にした。


「あの。」

「どうした?」

「素材を見てほしいんですけど…。」

「分かった。ここに出してくれ。」


 そういって出された箱に今日の戦利品を乗せていく彰悟。


「ケイブバットに毒オオムカデか。やっこさんもしかして初めてのダンジョンだったのか?」

「は、はい!ケイブバット七体、毒オオムカデ二体倒しました!」

「そうかい。ん?ケイブバットの素材が一体分多いぞ?」

「それは、ケイブバットと毒オオムカデが争ってていて自分じゃなくて毒オオムカデが倒していた分です。」

「正直だな。…で?どうする?全部売ったら一万にはなるぞ?」

「えっと、《毒オオムカデの外骨格》は自分の防具にしたいんで《毒オオムカデの毒腺》とケイブバットだけ売ります。」

「だったら四千円だな。」

「分かりました。」

「…はい。じゃあこれ。これからもどんどん素材を持ってきてくれよ?」

「はい!では!」


 初めての換金に嬉しくなりながら彰悟は家に帰った。


「ただいま~。」

「お帰りお兄ちゃん。汗臭いからお風呂入って。」

「あはは。…分かったよ。」


 家に帰って第一声が妹からの容赦ない言葉だった彰悟はしょんぼりしながらもダンジョンで動き回ったからそれもそうかと思いお風呂に入った。


「ふ~。お風呂でたよ。」

「あ、彰悟。お夕飯運んでくれる?」

「は~い。」


 お風呂から出て水分補給をする彰悟は母親に頼まれ夕飯をリビングに運んだ。


「はい、今日は麻婆豆腐よ。」

「やった!好きなんだよね!」

「彰悟が初めてのダンジョンだったから彰悟が好きなのにしたのよ。」

「お兄ちゃんダンジョンってどうだったの?」


 父親はまだ帰ってきていなかったが先に夕飯を食べ始めた彰悟と妹と母親。妹は彰悟にダンジョンの事を聞き始めた。


「う~ん。取り敢えず今日行った場所は洞窟みたいだったよ。」

「モンスターは?どんなモンスターが居たの?」

「ケイブバットっていうコウモリと毒オオムカデっていうでっかいムカデがいたよ。」

「あら、毒があるモンスターって怪我してないでしょうね。」

「毒は大丈夫だったよ。」

「毒は?」

「やっば。」

「詳しく教えなさい。」


 ケイブバットの攻撃を受けたことを母親に詰められそうになった彰悟だったが丁度タイミング良く、


「ただいま~!」


 父親が帰ってきた。


「お、彰悟、初めてのダンジョンはどうだった?」


 父親も夕飯を食べ始めると話題は再び彰悟のダンジョンの話になった。


「う、うん。順調だったよ。」


 さっきのように怪我をした話になるのが怖かった彰悟は何とか誤魔化そうとしたが妹に


「でもお兄ちゃん怪我したんでしょ?」


 て言われてしまった。


「どんな怪我をしたんだ?」

「い、いや~。ケイブバットの超音波をちょっと食らっただけだよ。」


 と彰悟は二匹から食らったという事をぼかして伝えた。


「そうか。まぁ頑張れよ。」

「ちょっとあなた!」

「え?」


 止められると思っていた彰悟は父親があっさりしていたので驚いていると父親は


「だってダンジョンにいくと決まった時から怪我をするのは分かりきっていた事だろ?今さら怪我をしたからといって怒ることはないだろう?」

「ま、まぁ。」

「確かにね。」


 そう母親と妹を諭した。


「どうせお前はダンジョンにまだ行くんだろ?」

「うん。まだ行く…かな。」

「なら俺は何も言わないが死ぬことだけは許さないからな。」

「うん。分かったよ。」


 こうして家族四人で夕食を食べるのだった


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 【家族情報】


 田中由美たなかゆみ


 彰悟の母親。特に何か特別なことがあるわけでもなく普通の専業主婦である。最初は彰悟が開拓者になること反対していたが彰悟に押しきられ開拓者になることを認めた。


 田中慎一たなかしんいち


 彰悟の父親。今は普通のサラリーマンだが若い頃は開拓者に憧れていた。彰悟が開拓者になりたいと言った時自分の若い頃を思いだし彰悟には夢を追いかけさせたいと思い開拓者へなることを応援している。


 田中美鈴たなかみれい


 彰悟の妹。中学生であり本当は彰悟の事も兄として好きであるが兄弟のいる周りが兄への文句を学校で言っているため美鈴も兄を嫌いであるというスタイルで過ごしている。その為初めてのダンジョンで攻撃を食らったと知って心配していた。


 【開拓者情報】


柴田優也しばたゆうや


「目黒ダンジョン」で警備の依頼を受けている際に彰悟に出会った開拓者。自身が初めてダンジョンに入る際、調子に乗って一人でダンジョンに潜り死にそうになったがその当時から有名であり現在日本一のクランである「日ノ本の集い」のリーダーである人物に救ってもらい自身もそうなりたいと思い「日ノ本の集い」へ入った。限られた開拓者しか出来ない「職業の進化」を体験しており現在の職業は「騎士」である。


神宮寺綾じんぐうじあや


優也とおなじパーティーに所属する盗賊。盗賊は一人では火力がなく不遇であるがパーティーでは索敵等で重宝される職業である。綾は元々、友達とパーティーを組んでいたが男女の問題でパーティーがバラバラになってしまい、それまでは大人しかった性格だったがサバサバした性格へと変わっていった。その後「日ノ本の集い」にスカウトを受け優也達とパーティーを組むことになった。


石井一真いしいかずま


優也とおなじパーティーに所属する神官。実は昔普通のサラリーマンであったが弟が開拓者をしておりモンスターに殺されてしまった事を機に脱サラし開拓者へなった。最初は回復系である神官になった事でもっと早くなっていれば弟を助けられたのではなかったのかと悩み、モンスターへ復讐出来ないことへ絶望したが今では一人でも多くの開拓者を救うために努力をしている。そんな中クランへスカウトをされ優也達とパーティーを組むことになった。

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