第5話

*撫川の家。部屋で一人。ベッドに突っ伏してふさぎ込んでいる

 (ココから少しの間、撫川桔梗視点)


桔梗のつぶやき「せっかく。せっかく壮馬君と再会できたのに。ようやく仲良くなれたっていうのに…… サイアクだ。まさか、あんなところでカエデとサツキに会うなんて……

もうだめだ。私がギャルだとばれてしまった以上、壮馬君はもう振り向いてなんかくれない。壮馬君は、ギャルが苦手なんだから……

あれは、中学生の頃の話……」


*回想シーン ギャルだったころの撫川と、楓と皐月の三人。チャラい三人組に出会う



チャラ男「あれ、おねーさんたちかわいーね。俺達とどっか遊びに行かねー?」

 

楓「えー、どーしよ―かなー。おに―さんたちがおごってくれるなら考えてもいーんだけど」


チャラ男B「いーよいーよ。おごってあげるよ。ゴハンだってホテル代だって」


皐月「ホテルだってさ。やっば!」


 ――正直に言うと、こういうノリはあまり好きではなかった。楓や皐月だってそれなりにわきまえてはいるから道を踏み誤るということはないけれど、ギャルをやっていればこの手の相手に絡まれるのは日常茶飯事だ。


 私は、本心からギャルをやりたかったわけではない。両親はいつも仕事が忙しくって、私に少しも構ってくれない。さみしさもあって気を惹きたいがために少し無理をしながらギャルをはじめ、楓たちとつるむようになった。

それでも、両親が私に振り向いてくれることはなかった。


そんなある日のことだ。私のヒーローに出会ったのは。



チャラ男C「ねー、いーじゃんよー。一緒にあそぼーぜ」


桔梗「いや、行かないですって。それにホテルとか、マジで無理なんで」


 *チャラ男の目つきが変わる


チャラ男A「なんだと? お前らさ、さっきから下手に出てりゃ調子に乗るんじゃねーぞ。黙ってついてこっての!」


 *チャラ男Cが撫川の腕を掴む


桔梗「痛い、やめて!」


チャラ男C「黙れって言ってるだろ!」


 壮馬とその友人が登場


壮馬「おいおい、嫌がってんじゃねーか」


友人「壮馬やめとけって。めんどいだろ」


壮馬「いや、見逃せないだろ。この子嫌がってんだからさ」


チャラ男B「おい、やんのかよ。コラ」


壮馬「お前らがやる気なら相手してやっても構わんぞ」


チャラ男A「おい、やめとけ。コイツの目つきはヤバい。相手しないほうがいい」


チャラ男B「チッ、憶えてろよ」


 チャラ男立ち去る


桔梗「あの……ありがとうございます。その……助けていただいて」


壮馬「あんたたちも気を付けなよ。ギャルなんてやってたら軽く見られてああいう変なのもよって来るんだからさ」


 *そのまま立ち去る壮馬達。立ち去りながら会話が聞こえる


友人「なあ壮馬。お前なんで助けたの?」


壮馬「気まぐれだよ」


友人「つかさ、お前あの子、好みだったんだろ?」


壮馬「違うよ。俺はギャルは苦手なんだ」


友人「かわいい子だったのに、連絡先くらい聞けばよかったにな」


壮馬「うるさいよ。ほら、行くぞ」



 *現在に戻る。 撫川の部屋


――あれからもう一度壮馬君に会いたくて探し回り、地元の公立高校へ進学するという話を聞いた。私は両親を説得し、公立の高校へ進学することを決めた。

壮馬君がギャルは苦手だと言っていたのでやめて、清楚可憐を目指した


そして、ようやく仲良くなりかけたというのに……失敗した。

もう、ギャルだとわかっった私に壮馬君は仲良くしてくれないだろう。


 *スマホにSNS着信。 壮馬君から『会って話がしたい』と来ている


桔梗「そんな、合わせる顔なんてないよ……」


 *再びSNS 『お願いだ。出てきてくれ』


桔梗「無理だよそんな……ん、出てきて?」


 *ドアチャイムが鳴る 窓から外を覗くと家の前に壮馬君がいる。


桔梗「え! どうしてここに? ど、ど、ど、どうしよう……」



*再び壮馬視点。 桔梗の部屋に二人でいる。壮馬、落ち着かない様子



桔梗「ど、どうしてここに」


壮馬「ごめん、突然押しかけてしまって……家の場所、楓さんと皐月さんに聞いた」


桔梗「あ、アイツら……」


壮馬「あの二人のことは悪く言わないでやってくれ。悪気があって言ったわけじゃないんだ。ひさしぶりに会えたから、少しテンションが上がっていたんだって……」


桔梗「まあ、悪い奴らじゃないことはわかってんだけど……」


壮馬「さっきさ、ふたりに聞いたんだよ。その……俺たちが以前に会ったことがあるっていうこと……俺は忘れていたんだけどさ……皐月さんが思い出したみたいで……」


桔梗「え、あ、そ、そのう……それは……」


壮馬「俺は嬉しかったんだ。それと同時に、なんで撫川にあった時にすぐ気づかなかったんだって後悔もした」


桔梗「え、ど、どういうこと?」


壮馬「あの日のことは今でもはっきり覚えているんだ。もしかして、あの日、俺が友達にギャルは苦手だって言ったのを聞いていたんじゃないだろうかって……」


桔梗「う、うん。聞いた。それで、私……」


壮馬「あれは嘘だったんだ。あの時、ギャルだった撫川に一目ぼれして、なにがなんでもって思って仲裁に入ったんだ。笑っちゃうだろ? ほんとはさ、俺、喧嘩なんかもしたことなくて全然勝てる自信なんかもなかったんだけどさ、いいとこ見せたいって思って無我夢中で……いやあ、アイツらほんと立ち去ってくれて助かったよ」


桔梗「怖く、なかったの?」


壮馬「怖かったよそりゃあ。マジでビビってた。でもさ、そのあとで撫川のこと間近で見たらそん時よりももっとビビっちまってさ」


桔梗「え、ちょっと待って。壮馬君さっき私に一目ぼれしたって……」


*壮馬照れて赤くなる


壮馬「そ、そうなんだ。あまりにも恥ずかしくってそのまま逃げるように立ち去ってしまって……でも、友達には完全にばれててそれをごまかすためにギャルが苦手だとか言っちゃたんだ」


桔梗「え、それじゃあギャルは」


壮馬「別に苦手じゃあないよ。そういうことで判断はしないかな。でも、正直に言えばクラスで初めて撫川に会った時も同じように一目ぼれしていたんだ。だけど、雰囲気が違いすぎていて同じ人だと気づかなかった……大失敗だよ」


桔梗「え、クラスであった時、清楚キャラの私のことも好きになってくれていたの?」


壮馬「当たり前じゃないか。撫川なら何度、どんな風にあったとしてもそのたびに絶対に好きになるよ。だって、君なんだから」


桔梗「うれしい!」


 *撫川は壮馬に飛びつき、そのままベッドに押し倒す形に


壮馬「え、いや……さすがにそれはマズイって……そういうことをされると……」


――ダメだ。やっぱり撫川は男に対して無防備すぎる

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隣の席の無防備な美女に危機感を持たせるために壁ドンを仕掛けてみたら、どうやらその気になってしまったらしい 水鏡月 聖 @mikazuki-hiziri

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