調査記録3

 【調査記録3】

 

 桐谷に殺害された被害者の一人、志麻陽子は当時二十九歳だった。


 市役所で働く夫と長女の三人で一軒家に暮らし、専業主婦として家事と子育てを行っていた。周囲の住人から見ても、絵に描いたような幸福な家庭だった。派手ではないが、ある程度の収入があり、なによりも愛情があった。三人手をつないで遊びに出かける様子は、町の人に暖かな幸福の匂いを感じさせた。


 事件当日も、志麻陽子は娘とショッピングモールを訪れていた。本屋で娘の筆記用具や児童書を買い、ゲームセンターでクレーンゲームを二人で楽しんだ。昼食後、二人は車で「白鳥クリニック」に向かった。診察の待ち時間のあいだ、志麻陽子は近くのスーパーを調べていた。


 志麻陽子は診察を受けた後、病院の出口付近で腹部を刺され出血多量で死亡した。

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