(バラ)色の日々
雛形 絢尊
第1話
私は死んだ。
まさかこんな死に方をするなんて。
これが走馬灯か?
酷くぼやけている目の前の景色は
どことなく切なさを駆り出した。
徐々に褐色へと変貌していく。
異様であった。
後悔
そんな単語が脳裏に浮かぶ。
決して不自由ではない人生であった。
しかしながらもっと、
もっと幸せを見出していたはずだ。
薔薇色の日々。
あいつのようになりたかった。
私でいうあいつとは不特定多数の幸福を
凌駕するあいつである。
憧れではなく、それは嫉みであった。
もしもあいつ、ではなく
私があの時頷いていたら
あの道を歩いていたら
あの場に居合わせていたら
そんなことが多く
頭に浮かんでより赤に染まる。
あの時悩んでいたら
あの時時間を潰していたら
あの時あいつを殺しておけば
俺はもっと幸せだったんじゃないか?
死して尚、そんなことを考えてしまう自分が
情けなくてたまらなかった。
無性に楽しいことを思い出そうと必死で探す。
俺の人生はあいつを恨むためのものじゃない。
あったじゃないか、しっかり、
しっかりあるはずだ。
こんな人生だとしても
楽しいことばかりあったじゃないか。
俺はもっと幸せだったんじゃないか?
先ほどの言葉を再び思い出す。
なんだ、そうだよな。
そういうことだったんだな。
俺はあいつに羨ましがられていたんだな。
じゃあ、そうだよ。そうなるわ。
俺の方からバラしておくべきだった。
やがて薔薇色に目の前が染まる
《《「人の手のようなものが浮いている」
横浜市青葉区にて
バラバラにされた30代男性が発見された。》》
(バラ)色の日々 雛形 絢尊 @kensonhina
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