最終話:性の6時間。

「そんなの、いくらでも買ってあげるよ」

「って言うか・・・抱けちゃうって・・・めっちゃ意味深じゃん」


「じゃ〜言い換える・・・私とセックスできちゃうからね」

「お〜ダイレクト」


な訳で、ふたりで顔を見合わせて笑った。

僕はアリエルと別れてから久しぶりに本気で笑った気がした。


始まりはアクシデントでも終わりよければすべてよし・・・まだ終わってない

けど・・・。

ってことでアリエルは誰はばかることなく僕の彼女になった。


今度はまじな意味で写真部サークルのみんなにアリエルを合わせることができる。

僕は恥ずかしいことをやってしまったその汚点を払拭するためにアリエルを連れて

行った。


「あの時はウソついちゃってごめんなさい・・・今度はまじで、私、服ちゃんの

彼女です、よろしくね」


「まだレンタル彼女ってことはないよな」


礼二が皮肉った。


(レンタル彼女じゃなくてレンタル天使だよ、礼二・・・だけどそれを言っても

きっと信じないから・・・アリエルが天使だって知ってるのは桜ちゃんだけだ)


「福志・・・よかったじゃないか、五年間彼女いない歴に終止符だな」


そう言ったのは登だった。

桜ちゃんが僕の近づいてきて僕を自分のところに引き寄せてアリエルに聞こえない

よう耳元で言った。


「彼女が天使なんレアなんだからフラれないようにね・・・まあもしフラれたら

私が面倒みてあげるから・・・」


「あはは・・・縁起でもない・・・でもまあその時はよろしく・・・」


とりあえず僕の面子は保たれて、みんなにも受け入れてもらえた。

僕とアリエルは安心して部室を後にした。


「服ちゃん・・・さっき、女の子になに耳打ちされてたの?」


「彼女が天使なんてレアなんだから大事にしなさいよって・・・」


「うん、ナイスアドバイス」


大学の校舎を出ると外は雪がちらほら・・・。


「福ちゃん、雪降ってるってば」


「ほんとだ・・・・早くアパートに帰ろう」


「もうすぐクリスマスだよ服ちゃん」


「そんな時期だって忘れそうになるよ・・・だって毎年クリスマスは一人寂しく

迎えてたからね・・・今年は雪が溶けるくらい暑くなりそう」


「一緒にクリスマスすごそうね、福ちゃん」

「でね・・・クリスマスエッチっていいと思わない?」


「クリスマスエッチ?」


「クリスマスにはカップルは必ずエッチするんだよ、服ちゃん」

「クリスマスエッチの「性の6時間」って知ってる?」


「性の6時間・・・知らない」


クリスマスの「性の6時間」って言うのはね、12月24日の21時から12月25日

の深夜3時までの時間帯が一年で一番セックスするカップルが多いって言われ

てるんだよ」


「へ〜そうなんだ、みんなスケベなカップルばっかなんだな」

「じゃ〜僕らもスケベな連中の仲間入りするわけ?」

「え?・・・でイブまで何日あるんだっけ?」


「一週間」


「それまでに心の準備しとかなきゃ・・・」

「そうだ・・・それもだけど肝心なこと君に言うの忘れてる?」


「肝心なこと?」


「そう・・・肝心なこと」


「言うよ、いい?」


「どうぞ・・・」


「アリエル・コッタ様・・・僕と結婚して?」


「いきなり?・・・しかもストレートだしサプライズとかないし」


「僕はサプライズなんてまどろっこしいこと嫌いなの」


「私は好きだけどな〜私のためだけにいろいろ考えてくれるって素敵じゃない」


「いいじゃん・・・それに、そのつもりでいたから天界には帰らないって言った

んだよね」


「そうだけど、もうちょっとラブラブな時間過ごそうよ・・・結婚はそれから

でも遅くないでしょ?」

「私、福ちゃんとの思い出いっぱい作りたいもん」


「分かった・・・アリエルの好きなようにすればいいよ・・・」

「愛してるよアリエル」


「私も・・・愛してる・・・福ちゃん」

「私は福ちゃんだけのレンタル抜きの恋人だからね」

永遠とわにって言ってあげたいけど・・・私のほうが長生きするから・・・」

「福ちゃんがこの世を去るまでってことにしとくね」


「え〜」


で、クリスマスイブの夜、ふたりはなんとかエッチできて、おまけにアリエルの

背中に本物の羽が生えたんだって。

それって一級天使になれたって証らしいよ。


おしまい。





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いっそレンタル彼女。令和の天使ってマジあざとい。 猫の尻尾 @amanotenshi

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