第3話:天使だって自己アピールする時代。
「もしお願いするとしてもタダで天使が僕の彼女さんになってくれるわけじゃ
ないですよね?」
「もちろん料金はかかります」
「タダなんて・・そんなこと世の中舐めてますよ、幸野さん」
「な、舐めてないですよ・・・」
「あのさ、でもさ、ネットって天界にまで繋がってたりする訳?」
「繋がってますよ・・・普通に」
「なんで天界で、しかも天使がレンタル代行なんかやってんの?」
「天使だって自己アピールする時代ですから・・・」
「昔と違って天使の存在って気薄になってるでしょ?」
「人間の中には天使なんていないって思ってるおバカちゃんもいますしぃ」
「ああ・・・なるほど僕もおバカなんだ・・・」
「あ〜それでレンタル天使とレンタル彼女を勘違いして君を選んだってこと?」
「選んだサイトは間違ってたかもだけけど、私を選んだことは正解ね」
「僕もそう思うわ・・・」
「あのさ、レンタル天使って基本的になにしてくれるの?」
「そうですね、基本的にはおうちの中で一緒の時間を共有できます、お望みなら
外でデートなんかもできちゃいます」
「おうちの中なら一緒にテレビ見たり、お食事したり、おしゃべりしたりとか」
「あのキスはダメですけど、ハグくらいならオッケーです」
「あと勘違いしないで欲しいのはデリヘル嬢みたいに性的サービスはしないからね、
エッチいことはしませんから、そのつもりでお願いします」
「期待なさってもダメですよ」
「分かりました・・・そう言うサービスなくても料金べらぼうに高いんでしょ?」
「コースによります」
「ちなみに二時間で20,000円〜25,000円程度・・・それが基本料金です。
さらにラブラブ擬似デートになるオプション料金がプラス約5000円で飲食代や
イベント、施設利用料は、お客様ご負担・・・そんな感じぃ」
「それからお泊まりとかはしないから・・・」
「そうなんだ・・・つまんねえ・・・あああ、違います」
「でも二時間なんてあっという間じゃないですか・・・ぼったくりですよ」
「お断りいただいてもけっこうですけどキャンセル料ガバっとかかっちゃいます」
「うそ〜頼んだ覚えないのに?」
「もう登録なさってます、ちゃんと私を選んでくださってます」
「まあ、たしかに君は僕のタイプだし来てくれたら楽しいだろうなって
思いますけど・・・いや、楽しいどころかきっと二時間の間に完全に君に撃沈
しちゃうと思うけど・・・」
「でも断るとキャンセル料が発生するって抜き差しならない状況だよね」
「で、これって今日だけですか?」
「そんなことありませんよ・・・呼んでいただいて時間さえ合えばいつでも
お伺いします」
(そうなんだ・・・待てよ、これって使えるかも・・・)
(この子を彼女だって連れ回したら、みんなの前で優越感に浸れる)
(こんなにアイドルみたいに可愛い子なんだからさ)
そんな姑息なことを考える僕。
「分かりました・・・じゃ〜20,000払いますから・・・僕の彼女でお願いします」
「かしこまりました・・・あ、料金は先払いになってますので」
で、僕はバイトで稼いだ貴重な生活費から20000円彼女に払った。
(なんか知らないけど、僕は酒に酔っていてかレンタル天使さんのサイトへ
行って、この子をポチってしたらしい・・・)
まあ、酔ってるとは言え僕がポチってしたくらいだから間違いなくこの子は
可愛いわけで間違いなく僕のドンピシャのタイプな訳で、ビジュアル抜群・・・
髪は僕の好みどおりロング。
人間の女の子じゃないだけ。
「今から二時間、私、幸野さんの彼女だから、よろしくね」
彼女は玄関でペコッとお辞儀した。
「さっそくだけど、お部屋に上がっても?」
「あ、ずっと玄関だったですね、ごめんなさい」
「じゃ〜そういうことで、よろしくです・・・え〜とアリエルさん」
「彼女なんだからアリエルでいいよ、福ちゃん」
「福ちゃん?」
「うん、そうだよ私の彼氏だからね」
「じゃ〜、お邪魔するね」
「お金払うと一気にタメになるんですね」
「そんなことないよ」
「あ、あくまでレンタル天使だからね、まじな彼女とか恋人とかって思い込んで
公私混同してその気にならないでね」
「そうなっちゃったら対応できなくなるからね・・・」
(・・・わ、悪いけど僕はすでに君に惚れちゃってるんだけど・・・)
あくまでレンタルなんだ・・・どこまで行っても、いつまで経ってもレンタル・・・アリエルは永遠に僕の彼女、恋人のなることはないんだ・・・それも切ないよな。
こんな可愛い子が目の前にいるのに・・・。
つくずく酒って怖いよな〜。
つづく。
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