第160話 サソリが出た
しばらく、砂漠を爆走した。
__それにしても
どうして、砂漠でも平気で走れるんだろう?
海岸の砂ていどでも、ひとは、足を取られる。
まして、ここは、砂漠だ。
速度が落ちるのが、当たり前なのに。
ゴーレム馬への謎が、いっそう深まった。
*
ぼくたちの馬車は、今、巨大サソリに囲まれていた。
コンビニの店舗よりは、大きいサソリだ。
爆走してたから、あっという間に、目を付けられたらしい。
ふつうに考えたら、超ピンチなんだけど。
「ゴーレム零号機。行くのです」
ルリが、ぴしりと指差した。
十階建てのマンションのようなゴーレムだった。
巨石をつなぎ合わせたようなフォルム。
とうぜん、巨大サソリよりも大きい。
言うまでもないと思うけど、電源コードはない。
向こうの大陸で、小型飛空艇を叩き落とした時は、『手』だけだった。
いまは、その全貌を見せつけている。
どうみても、砂で、できてるようには見えない。
だから、召喚したと考えるべきなんだろうね。
ズシン、ズシン……
零号機を見上げる、サソリたちが、冷や汗を流してるように見えた。
目の錯覚だろうけど。
サソリの群れは、巨大なハサミを振り上げて……………逃走した。
「逃さないの」
ヒスイの声とともに、砂の中から、太い根っこが飛び出してきた。
これも、召喚してるんだろうね。砂漠なんだから。
ブスっ!ブスっ!ブスっ!ブスっ!ブスっ!(以下省略)
次々と、巨大サソリを串刺しにしてゆく。
一本一本が、電子柱よりはるかに太い。
串焼き風になったサソリは、身悶えしながら、消えていった。
【収集の加護】だ。
倒したと判定されたものは、自動的に、収納される。
あとに残ったのは、うねうねする根っこだけだった。
ぐしゃり!ぐしゃり!ぐしゃり!
退路を絶たれたサソリの頭部を、零号機が、叩き潰していた。
次々と、消えてゆくサソリ。
そして、最後の一匹。
零号機は、尻尾をつかんで、釣り上げた。
「クラリスちゃん。焼いて欲しいのです」
「はい。わかりました!」
食べたいんだろうか。
ルリは、クラリスに、サソリを焼いてもらっていた。
もちろん、火魔法だ。
クラリスの、『パワーレベリング』も、兼ねているんだろうと思う。
もちろん、【収集】は、【OFF】だ。
でないと、焼き上がる前に、収納されてしまう。
しばらく、じっくり焼いていた。
クラリスも、結界で守られている。
だから、灼熱の砂漠で、焼き物担当をしても暑くはない。
真っ赤に焼き上がった巨大サソリは、【倉庫】に収納した。
ぼくらが、解体すると、ぐちゃちゃにしそうだからね。
エルフ&ドワーフの調理班に任せたんだ。
無駄にしたら、もったいないし。
なんとなく、エビっぽいのかなと思う。
だって、似てるのって、ザリガニくらいだもの。
それなら、美味しそうな気もする。
エビ味と仮定すると、やはり、エビチリだろうか。
チリソースが、必要になる?
香辛料、調味料はすでに作ってある。
あとは、トマトソースかな?
だって、チリソースって、赤いから。
アレって、トマトの色だよね?
そろそろ。トマトソースなら、作れそうな気がする。
あとで、やってみよう。
トマトピューレも作れたら、ミートソースもできるんだろうか。
名前は、知っているけど、実体がいまいちわからない。
ソースだの。ピューレだの。ペーストだの。あと、ジャム?
なんか、みんな。ぐちゃっとした感じだと思うんだけど。
名前が違うんだから、実体も違うんだろう。
でも、【自給自足】は、【アカシックレコード】を参照する。
だから、ぼくが知らなくてもOKだ。
名前すら知らないと、どうしようもないけど…。
「あの固い殻は、武具などの素材になるそうですよ。シュウ。
本に、そう書いてありました」
締めくくりに、ソフィア先生が、解説していた。
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