第160話 サソリが出た

しばらく、砂漠を爆走した。



__それにしても



どうして、砂漠でも平気で走れるんだろう?


海岸の砂ていどでも、ひとは、足を取られる。


まして、ここは、砂漠だ。


速度が落ちるのが、当たり前なのに。



ゴーレム馬への謎が、いっそう深まった。







ぼくたちの馬車は、今、巨大サソリに囲まれていた。


コンビニの店舗よりは、大きいサソリだ。


爆走してたから、あっという間に、目を付けられたらしい。



ふつうに考えたら、超ピンチなんだけど。



「ゴーレム零号機。行くのです」


ルリが、ぴしりと指差した。



十階建てのマンションのようなゴーレムだった。


巨石をつなぎ合わせたようなフォルム。


とうぜん、巨大サソリよりも大きい。


言うまでもないと思うけど、電源コードはない。



向こうの大陸で、小型飛空艇を叩き落とした時は、『手』だけだった。


いまは、その全貌を見せつけている。


どうみても、砂で、できてるようには見えない。


だから、召喚したと考えるべきなんだろうね。



ズシン、ズシン……



零号機を見上げる、サソリたちが、冷や汗を流してるように見えた。


目の錯覚だろうけど。



サソリの群れは、巨大なハサミを振り上げて……………逃走した。



「逃さないの」



ヒスイの声とともに、砂の中から、太い根っこが飛び出してきた。


これも、召喚してるんだろうね。砂漠なんだから。



ブスっ!ブスっ!ブスっ!ブスっ!ブスっ!(以下省略)



次々と、巨大サソリを串刺しにしてゆく。


一本一本が、電子柱よりはるかに太い。


串焼き風になったサソリは、身悶えしながら、消えていった。


【収集の加護】だ。


倒したと判定されたものは、自動的に、収納される。


あとに残ったのは、うねうねする根っこだけだった。



ぐしゃり!ぐしゃり!ぐしゃり!



退路を絶たれたサソリの頭部を、零号機が、叩き潰していた。


次々と、消えてゆくサソリ。



そして、最後の一匹。



零号機は、尻尾をつかんで、釣り上げた。



「クラリスちゃん。焼いて欲しいのです」


「はい。わかりました!」



食べたいんだろうか。


ルリは、クラリスに、サソリを焼いてもらっていた。


もちろん、火魔法だ。


クラリスの、『パワーレベリング』も、兼ねているんだろうと思う。



もちろん、【収集】は、【OFF】だ。


でないと、焼き上がる前に、収納されてしまう。




しばらく、じっくり焼いていた。




クラリスも、結界で守られている。


だから、灼熱の砂漠で、焼き物担当をしても暑くはない。




真っ赤に焼き上がった巨大サソリは、【倉庫】に収納した。


ぼくらが、解体すると、ぐちゃちゃにしそうだからね。


エルフ&ドワーフの調理班に任せたんだ。


無駄にしたら、もったいないし。


あやめた以上は、ぜんぶ、ちゃんと使ってあげないと。



なんとなく、エビっぽいのかなと思う。


だって、似てるのって、ザリガニくらいだもの。


それなら、美味しそうな気もする。



エビ味と仮定すると、やはり、エビチリだろうか。


チリソースが、必要になる?



香辛料、調味料はすでに作ってある。


あとは、トマトソースかな?


だって、チリソースって、赤いから。


アレって、トマトの色だよね?



そろそろ。トマトソースなら、作れそうな気がする。


あとで、やってみよう。


トマトピューレも作れたら、ミートソースもできるんだろうか。


名前は、知っているけど、実体がいまいちわからない。



ソースだの。ピューレだの。ペーストだの。あと、ジャム?


なんか、みんな。ぐちゃっとした感じだと思うんだけど。


名前が違うんだから、実体も違うんだろう。




でも、【自給自足】は、【アカシックレコード】を参照する。


だから、ぼくが知らなくてもOKだ。


名前すら知らないと、どうしようもないけど…。




「あの固い殻は、武具などの素材になるそうですよ。シュウ。


本に、そう書いてありました」


締めくくりに、ソフィア先生が、解説していた。



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