第113話 事情聴取?
翌朝。
せっかくだから、ちょっと王都に寄ることにした。
担任のお姉さんは、お仕事なのか。
泣く泣く、王都の学園に行った。気の毒に。
侯爵令嬢も乗っているので、馬車のまま貴族門を通過。
冒険者ギルドの前で、ゴーレム馬ごと、リュックに収納した。
混み合う時間は、過ぎている。
それでも、王都のせいか。冒険者がけっこういた。
注目を浴びながら、カウンターへ。
__いや。わかってるよ
注目を浴びているのは、ぼくじゃないってことくらい。
ソフィアたちは、今更だろう。
侯爵令嬢も、かなりの美形。
エルフ妹は、言うまでもない。
男でも、ドワーフは、それなりに目立つ。
「おいおい。あのガキ、頭にスライムを載せてるぜ」
「もしかして、従魔か? でも、スライムなんかどうすんだ?」
「見てよアレ。白いスライムだよ。めずらしいね」
「白くてちっちゃいから、けっこう、かわいいんじゃない?」
「赤いベストなんて着てるよ。おしゃれなスライムだね!」
ぼくも、注目を浴びていた。
いや、注目されているのは、頭上のスライムか?
しかも、賛否両論?
__どっちにしても
まだ、ぼくとスライムの噂は、広まってないらしい。
「こいつの従魔登録をしたい」
受付の美少女に、ギルドカードを差し出した。
さすが、王都。
美少女レベルも高い。
でも、すぐ、以前のアネットを思い出してしまう。
それで、不安になってしまう。
また、ポンコツ受付嬢じゃないのって?
ある意味、呪い?
「やはり、来たか。遅かったな」
美少女の代わりに、美人のおばさんが答えた。
「うん?」
__誰だろう?
ぼくのことを知ってるみたいだけど。
「おいおい。まだ、半日も
もう、忘れたのか?」
「学園長といっしょにいたひとだよー」
「たぶん、ギルマスじゃねえのか」
ドワーフ&エルフ兄妹が、教えてくれた。
そういえば、そんなひともいたような。
「とにかく、大勢で窓口を
こっちへ来てくれ」
赤いベストを着たスライムが、片手?を、ぽんと水晶に載せた。
ジーッジジーッ!
例の箱から、ぼくのカードが出てきた。
「ふむ。『白スライム』か……」
カードを見ながら、美人のおばさんは、ため息をついた。
「白ワイバーンに、白狼。
そして、今度は、白スライム。
お前の従魔は、白ばっかりだな」
「偶然だろう」
ほかに、言いようがない。
「このスライムは、ダンジョンの最下層で拾ったんだな?」
「ああ、そうだ。でも、最下層かどうかはわからんぞ。
壁に書いてあったわけじゃないからな。
あの女子学生が、そう、推測しただけだ」
デパートみたいに、『◯◯階』とか、表示すればいいのに。
ふと、そう思った。
「女子学生って、お前。
この国の皇女殿下だぞ」
「自称だろう?」
「「「「「違うわ!」」」」」
地元民の声が、ハモった。
本物だったらしい。
「……ったく。それで、エサをやったらついてきた。そうだな?」
まだ、続くんだ。この事情聴取。
「そうだ」
「何を与えたんだ?」
「魔物の死骸」
「ほう。たとえば、どんな?」
「ゴブリン」
底辺冒険者だからね。
このくらいが、ちょうどいい?
「お前。一階層で、ミノタウルスを瞬殺しておいて。
今更、ゴブリンは、ないだろう。
言いたくないなら、まあ、いい」
そうだった。忘れてた。
「どのくらい与えたんだ?
その『ゴブリン』とやらを」
『ゴブリン』って言う時、ちょっと、いじわるな顔になった。
美人だから、嫌な感じはしない。
おばさんだけど、目を細めて見れば、お姉さんに見えそうだ。
いや。やらないけど。
「ありったけ?」
そう言わないと、『見せてみろ』なんて言われそうだからね。
「ふん。残りを見せろと言うとでも思ったか?
まあ、いい。ほかには、何を与えた?」
「オレンジジュース」
「ふゅっ!」
ここで、スライムが、親指?を立てた。
ナイスなタイミングだった。
美人のおばさんは、頭を抱えた。
__なんで?
「……な、なるほどな。たしかに、頭の良いスライムのようだな。
そうでないと、出口まで案内できないか。
正確には、出口につながっている転移魔法陣だがな」
「ああ。たしかに、頭はいいと思うぞ」
ウチのペットは、みんな頭がいいけど。
「ダンジョンの異変の原因についてだが。
スライムを連れ出したせいだ、という意見もある」
「まあ。そうだろうな」
「ほう。あっさり認めるんだな。
そんなことはないと、言い張るかと思ったが」
「まさか。何を考えようが、それは自由だ。
他の理由が思いつかなければ、そう考えるのも無理はない。
だが、こいつは、オレのペットだ。
ちびたちとも、すでに仲良しだ。
だから、誰が何と言おうと、手放すつもりはない」
「貴族や、王族が、寄越せと言ってもか?」
「もちろんだ。誰であろうと、渡さない。
ちからずくで奪おうとするなら、返り討ちにするだけだ」
「『逃げる』じゃなくて、『返り討ち』か?
お前でなければ、『イキがるな』と言いたいところだが……。
まあ、よかろう。すでに、『従魔登録』は済ませたんだ。
誰にも、お前から奪う『権利』はない。
いくらでも、返り討ちにすればいいさ。殺さない程度にな」
__ふうん
意外と話のわかるギルマスだったんだ。
さすが、美人は違うね。
おばさんだけど。
今度、目を細めて眺めてみよう。
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