目が覚めたら、女神に踏まれていた!?

法蓮奏

第1章

第1話 目が覚めたら

なぜ、こんなことになっているのか?


いや、わかってる。わかってるんだ。


また、いつも癖が出たんだ。悪い癖が。



「目が覚めたようね」


女神が、ぼくを見下ろしてる。


すごい目で。


けっこう怒ってるみたいだ。



「あなた、自分が何を言ったか。覚えているかしら?」


もちろん、覚えてる。


あまり、思い出したくないけど。



「ふん。あたりまえだ。


それで、お前は、さっそく願いをかなえてくれたんだな」



「何を、馬鹿なことを………はっ!」


やっと気づいてくれた。


そんな短いドレスで人を踏んづけたら、見えるに決まってる。



「くっ、死ね!」


なんか、ぐにゃってした。


ぼくは、また、気をうしなった。


いや、死んだかな。



………



………



__ああ…、あたたかい。



また、目が覚めた。


ここは、天国かな。きっと、そうだな。



「天国じゃなくて、天界ですよぉ」


さっきとは違う女神だった。


うっすらピンクの、ツインテ女神だ。



ぼくに、手をかざしている。


淡い光が、とってもあったかい。



「そうか、オレは死んだのだな。あの女神に踏み潰されて。


お前は、天国の女神だな。さっきのとは違って、ずいぶん神々しい」



「だから、天国じゃなくて、天界ですよぉ。


神々しいのは、今、蘇生してるからですぅ。


わかってるくせに、これ以上、あおらないでくださいよぅ」



うん。視界には入っていた。


さっきの女神が、他の女神に羽交い締めにされてるのが。


『殺す殺す!ぜったい殺す!』って叫びながら。



もう、やめてくれないかな。ほんと。


さっき、一回、殺してるんだから。



「お前もお前だ。せっかく願いをかなえようと言ってるのに。


あんなことを言うとは…。まったく、前代未聞だ」



「おぬしの気持ちもわからんではない。


アルテミスの態度も、褒められたものではなかったからのう」



「くくくっ…。だが、アレはねえだろうよ。


女神にむかって、『お前のパンツを見せてみろ』は。


殺されても文句は言えねえよ」



そうだよな。


でも、すこし、ムカついたんだ。







要するに、ぼくは、巻き込まれたらしい。


とある王国が行った『勇者召喚』に。


それだけなら、まだよかった。


日本に帰りたいと言ったぼくに、あの女神が言ったんだ。



「日本とやらに帰っても、あなたの居場所はありません」って。



どうやら、ぼくの存在は、抹消されたらしい。


戸籍とか、法律とか、そんな次元じゃない。


ぼくは、『最初から、いなかったこと』にされたんだ。


もう、誰も、ぼくを覚えていないそうだ。




ぼくは、目の前が、まっ白になった。




その時、あの女神が言ったんだ。


それも、小馬鹿にするような目で見下ろしながら。



「帰っても野垂れ死にするだけです。


諦めて、こちらの世界で生きなさい。……そうですね。


願いくらいは、かなえてあげましょう。言ってみなさい」と。



ぼくは、カチンと来たんだ。


女神なら、管理責任くらいあるだろう。


なんて、無責任な言い草だって。


それで、つい、いつもの悪い癖が出たんだ。



「ふん、何を偉そうに。それなら、かなえてもらおうじゃないか。


まず、お前のパンツを見せてみろ」



次の瞬間。


ぼくは、目の前が真っ暗になった。



そして、目が覚めた時、踏まれていたんだ。


あの女神に。





わかってる。わかってるんだ。


悪い癖だってことは。



ぼくだって、何度も直そうとしたんだ。


この傲慢不遜ごうまんふそんしゃべり方を。



でも、こればかりは直らないんだ。


なんていうか。こう、魂にしみついていて。


口を開くと、いつの間にか、こういう喋り方になるんだ。



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