マルタイ 袋・冷やし中華5食入パック(春夏限定)
第09話 咲楽子先輩と冷やし中華始めました(1)
わたしの目の前で、中年男から邪悪な大声が発せられる──。
「政府備蓄米、本日入荷分売り切れましたーっ! 次回入荷は未定となっておりまーすっ!」
……あと二人。
髪を紫色に染めた自己主張強いオバサンの頭の向こうに見える、5キログラム・1,980円(税込)の備蓄米売り場……その
大学の帰り、たまたま見掛けたスーパー前の行列に違和感を覚え、とりあえず並んでから現状をスマホでリサーチ。
「スーパー○○で備蓄米ゲリラ販売!」……これだっ!
1,980円……一般的なお米のほぼ半額!
これは並ばなきゃ!
だってもうここしばらく……咲楽子先輩へ、お米食べさせられてないからっ!
わたしは毎日パン食でも構わないけれど……咲楽子先輩は違う!
もりもりと噛み、喉をぐびぐびと通過させる食感に愉悦を覚えてるあの笑顔は……絶対に米派!
たぶんパンもいけるんだろうけれど、天秤に掛けたらお米!
だったら……思いきって買うっ!?
一般のお米をっ!?
令和6年産あきたこまち……5キログラム・4,256円(税込)。
4,256……シニゴロ……死に頃!
ダメッ……普通のお米はわたしのお財布が死ぬっ!
かと言って、パン&パンケーキ類はここ最近連続してるし、麺類もマンネリ。
粉物……お好み焼き、タコ焼きは、ソースの匂いがキツいからダメ!
美冬さんに勘づかれちゃう!
ソースを使わない明石焼きなら、いけるかもだけど……。
咲楽子先輩のドカ食いスタイルに、あっさり出汁の明石焼きが太刀打ちできるかどうか……。
途中で味変を仕込まないと、まず飽きられちゃうんだけれど、その問題を解消できるレシピは見つけられず。
美冬さんに気づかれない匂い薄めの料理で、咲楽子先輩の満腹中枢を納得させられる一品……なにか、なにかないものか……。
「タイムサービスっ! 本日の、タイムサービスのお時間ですっ! 本日のタイムサービスは……旬のカツオ! カツオのたたき300グラムが──」
カツオのたたき……。
加熱調理不要だから匂いが漂わず染みつかず、ワサビ醤油でペロリといける。
つまにネギとワカメをたっぷり添えれば、咲楽子先輩もご満悦……。
「……ううん、ダメダメっ!」
あ、思わず自己否定の声出ちゃった。
でも咲楽子先輩にカツオは本当にダメ、うん。
魚としては脂が多くて、歯ごたえに厚みがあり、肉々しい部類。
それが旬のもの。
すなわち……咲楽子先輩がごはんを欲する可能性大っ!
『あ~、熱々のごはんが欲しいな~!
言う!
咲楽子先輩は確実に言う!
通い婚されてるわたしにはわかるっ!
一言一句
──ドドドドドドドドッ!
わわっ、タイムサービス狙いの
わ、わたしは……あの群れで戦い抜く貫禄ないから待避っ!
──サッ!
……ふう。
とっさの横っ飛びで事なきを得たけれど、ここは見慣れたインスタント麺……乾麺の棚……。
即席麺はまだまだ備蓄があるし、咲楽子先輩へちょくちょく出してるし、ここは素通りで──。
「……って、おやぁ?」
味のマルタイ・即席冷やし中華・5食入……。
へえぇ……初めて見た。
家庭用の冷やし中華って、生麺ばかりだと思ってたけれど……乾麺もあるんだぁ。
そう言えばもう、冷やし中華始めましたの季節。
これ…………いけるかもっ!
◇ ◇ ◇
株式会社マルタイ
袋・冷やし中華5食入パック(季節限定商品)
https://www.marutai.co.jp/products/archives/85
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