第2話:天翔星君の屋敷を訪ねて来た男。

次の日、天翔星君てんしょうせいくんの屋敷に一人の男が訪ねてきた。


「ごめん・・・天翔星君殿はご在宅か?」


「は〜い」


小間使いの侍女がやって来た男に対応した。


「あ、子等亜元こらあげん様・・・いらっしゃいませ」


小梟シャオシャオ・・・天翔殿は?」


「これはこれは子等亜元こらあげん殿か」

小梟シャオシャオもうよい、他の用事を・・・」


「かしこまりました、天翔様・・・」


そう言うと侍女は奥に引っ込んでいった。


「今日はまた、どのような御用件で?」


「あんたんとこの侍女は可愛い子ばかりだな・・・うやまましい限りよのう」


「侍女の見聞に来たわけではないでしょう?」


「おう、そうそう天翔殿は、先日起こった金貸しの主人あるじが殺された事件はもうご存知であろう?」


「ああ、あの件ですか・・・」


「あれから、捜査は続けているんだが、どうにも拉致があかんのだ」


「そうですか・・・少々お待ちを・・・」

小恋シャオレン・・・小恋はおらぬか?」


カワヤに入っていた恋恋レンレンは天翔星君に呼ばれて、出すモノもそこそこに

急いでやって来た。


「お呼びでしょうか、天翔様」

「あ、こんにちは子等亜元こらあげん様」


「おお、恋恋れんれん・・・相変わらずおぼこいのう〜」


子等亜元こらあげん様、鼻の下が伸びてます」


「可愛い子を見たら伸びるのは当たり前のこと・・・とくに恋恋は・・・」


子等亜元こらあげん殿、もうそのへんで・・・」


「おおそうであった・・・」

「話を戻そう・・・あの主人の殺され方だが状況からするとどうみても人の仕業とは思えん?」


「金貸しの主人のこと?」


「お、飲み込みが早いな恋恋」


「あれって妖怪の仕業だろうって天翔様が・・・」


「え?そうなのか・・・天翔殿」


「おそらく・・・潜んでおる場所も大方察しはついてはおりますが・・・」


「お〜さすが天翔殿」

「あ、そうそう・・・現場にこんなものが落ちておったわ」


そう言うと子等亜元こらあげんは手提げの袋からなにか出した。

それを見た恋恋。


「家中のものの持ちモノか下手人の持ちモノかは定かでないかな」


かんざしですか・・・そんな高級品、町娘のものじゃないですね」

「それに犯人はバカみたいに大きな証拠を残しているしな」


「証拠?それは?天翔殿」


「人間を真っ黒焦げにしておいて家を焼いていない・・・不思議だと思いませんか?

「あの金貸しの主人は生前、好色だったようだから熱を上げていたのは、おそらく

遊郭の遊女・・・下手人は遊女に化けた妖怪かと・・・」

「妖怪とも知らずに、足繁く通っていたのでしょう」

「で、何かで揉めた・・・か頃合いを見計らって遊女が裏切ったか?」


「そこまで分かっておるのならここからはぜひとも天才仙人殿に、ご出馬願える

とありがたのだが?・・・」

「相手が妖怪なら人間にはとても太刀打ちできんであろうからな?」


「まあ、犯人が妖怪なら妖術くらいは使うでしょうから素直に捕まってくれる

とは思えませんね」

「・・・いたしかたありません」

「妖怪などに関わりたくはないのですが、子等亜元こらあげん殿の頼みと

あっては断れませんね」


「それにこのまま放置しておいたら、また犠牲者が出ないとも限りません」

「お引き受けしましょう・・・」


「そうか、ありがたい・・・犯人を退治したらまた報告してくれ」


「承知・・・まずは遊郭へ足を運んでみましょう」


そんな訳で自分には関係ないと思っていた天翔星君・・・しぶしぶ事件解決を

引き受けた。


「と言うことだ、小恋シャオレン・・・これも修行だ、私と一緒に犯人退治だ」


「分かりました・・・なんでも修行なんですね」


ぶっきらぼうに返事をした恋恋だったが実は恋恋は殺人事件とか嫌いじゃなかった。

犯人を探し当てて人間なら裁きを受けさせる、妖怪ならこの世から抹消してしまう。


妖怪は牢獄に閉じ込めても、すぐに逃げ出してしまうから可哀想だけど、封印するか消してしまうしかない。

それに妖怪は一度や二度死んでも転生してどこかで復活するらしい。


修行だけで、なかなか仙術を使う機会がなかった恋恋は嬉しくて震えていた。


もしかしたら恋恋はどSかもしれない・・・または猟奇的仙女なのかも?・・・。


つづく。





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